今迄まあまあ詩を書いてきました。19歳から書き始めて大学を出る迄に千以上の、そして今現在は未発表作も含めて把握しきれぬ程に。
作曲もそうですけど、まれに夢の中で作れる時があるのです。そしてその様に出来上がった詩や歌は強い。理屈ぢゃないから。この「金星人」という詩も久しぶりに夢の中で作りました──正確には寝ぼけながら書き殴りました。寝起きに思い出しながら、夢半ばの意識/無意識で以て。自動筆記の様に、延々止まらぬ手で以て。こちとらまだ休んでいたいのに、忘れぬ内にと書き終えた頃には目も冴え冴えて。こいつはもう眠れん、AIよりAI。偶然に偶然を重ねた凄い必然性、理屈ぢゃないから……あ、でも、ちゃんと金星については調べましたわよ!
最初に数ページだけ立ち読みして“これだ!”と思って買ったNASAの最新レポートをまとめた金星本が意外と役に立たなくて(実験とか研究の内容が仔細でマニアック過ぎてチンプンカンプンやった)、それ3割くらい読んだ処で“違う!参考ならん!図書館いこ!”となり、中野と野方と高円寺の図書館で宇宙・天文の専門書やら写真集やら児童書やら7、8冊借りて、それらを数日読み込みながら、夢の中で作った金星の詩全体に、学術的な補強をまんべんなく行いました。荒唐無稽(こうとうむけい)、奇想天外、夢見心地で、自由気ままな、宇宙みたいな、嘘みたいな詩、しかしエビデンスエビデンス五月蝿(うるせ)え現代にも何一つ文句を云わせない詩、つまり牡牛座の心と天秤座の頭で書いた様な詩、ヴィーナスに愛される星々の詩、アフロディテその愛と美の詩……ご・ら・ん・あ・れ。
「金星人」
by Nori MBBM
1. ぼっち成層圏
太陽系という家には
太陽という親が居て
その周りを回り巡る
九人の子供らが居る
一番目の子を水星と
二番目の子を金星と
三番目の子を地球と
四番目の子を火星と
五番目の子を木星と
六番目の子を土星と
七番目八番目九番目
天王星海王星冥王星
と説明する迄もない
水金地火木土天海冥
ただ末っ子の冥王星
彼は勘当させられた
今回はその二番目の
金星という子の話だ
太陽系で一番熱い星
太陽家の輝ける星だ
気温500℃に近い星
昼間が58日間続く星
私はそこで生まれた
そこで詠まれた詩だ
いま三番目の地球という子に語り掛ける
──“I'm a Venus Loon.”
雲のふとんの上で
演奏者の誰か分からない
ピアノを聴いている
惑星を眺めながら
雨も雪も降らない世界で
ピアノを聴いている
初恋より前の恋人
時期も四季もない宇宙の
ピアノを聴いている
犬のお腹みたいなふとんの上で
2. 結構天才
昔、地球は日本の東京が新宿の歌舞伎町にて
とあるロックバーでバンドのギターと呑みで
よくグラムロックをかけて貰ってたんだけど
その時の俺らの虚名は“バカボンさん”だった
“西から昇ったおひさまが東へ沈む”の一節が
俺の中の俺の名前の俺に因んでピッタリでね
しかし本当の由来をここに打ち明けますとね
陽が西から昇るなど金星では当たり前なんだ
だって自転の向きが違う時点でお察しだろう
地球やその他の惑星は左向きに回転するとか
しかし金星だけは右向きに回るのですねとか
いやいや金星だけがちゃんと時計回りですよ
なに反時計回りしちゃってんすか
──“I'm a Venus Loon.”
居ない方が良い時に
居ない方が良い処で
やらなくて良い事を
そういうやり方の人
とても災難な人生を
かなり厄介な生活を
自ら手招いている人
こういうやり方の人
そんなんで嘆くのは
こんなんで泣くのは
本当に間抜けですが
天才だとも思います
本当の間抜けは無難ですから
3. アンチ侍ナイト
昔の夏はもっと涼しくてね
480℃もいかなかったんだ
だけどこの前の夏は507℃
めちゃ暑いよ、金星の夏は
地球と比べもんにならん!
507℃だよ、暑すぎだろ?
海という海は干上がったよ
雨だって降る前に蒸発する
1962年にマリナー2号がさ
温度を測ったら477℃だと
地球に知らせたんだろう?
あの頃より30℃も上昇だ!
こんな事ならいっそ自裁したいよ
──“I'm a Venus Loon.”
武士道だか何だか知らぬが
生き死にを見極めた退屈が
生き死にを語るのは止せよ
侍だかナイトだか知らぬが
生き死にしか知らぬ人間が
生き死にを語るのは止せよ
生き死に以外を知ってこそ
論外ばっかり極めて愉快な
生き死にを演ってのけるよ
処世術とは敢えて破る為にあるよ
4. 愛と美の惑星から
金星の顔を覆い隠す様に常に
金星の雲は黄色がかっていて
金星の夜はオレンヂ色である
電波望遠鏡で覗いて見てご覧
人工衛星を飛ばして来て着て
探査機のカメラ撮って取って
ティラノザウルスが居た頃の
地球に似た太古の温かい海よ
金星から来た僕は古代人だよ
火星から来たジギーは未来人だよ
──“I'm a Venus Loon.”
否定させてください
占いではねえんです
この地球の日本では
僕のこと誤解される
金星人の僕のことを
金星人というのはね
占いごとではないし
ただ金星で生まれた
それだけのものだよ
愛と美の使者ですよ
そんなんで良ければ
いくらでも話します
ちなみに火星に友達も居ますよ
5. 金星招致ツアー
陽が東に来たれる時
西の空に宵の明星と
陽が西へ行く時には
東の空へ明けの明星
宵と明けに現れたる
二つの星は別なる星
それが何と同じ明星
二つの名誉を冠す星
二つの栄誉に浴す星
それ即ち愛と美なり
二つの星を護する星
これ則ち牡牛と天秤
太陽と月には敵わぬが、惑星の中の一番の煌めき
──“I'm a Venus Loon.”
様々に君がアクセスできるならば
色々に君はアクセスされるだろう
主体性を君が奪おうとするならば
主導権は握られてしまうだろうよ
例えば私に握られたとして諸君が
反旗を翻したらば金星も変革する
地球の歴史がそうした様に願うよ
6. 牡牛と天秤の人々
ヴィーナスの一挙手一投足に一喜一憂する日々
バビロニアの僕ら足し算引き算掛け算割り算と
プトレマイオス恋焦がれた女とその他大勢の女
ガリレオ見つけた女の悩みを僕らと同じ悩みを
僕らは決して宇宙の主役なんかぢゃなかったと
惑星一輝く女もヒロインなんかぢゃなかったと
主演はどうやらやっぱり太陽と月で間違いない
ならば宇宙の片隅でひっそりとゆっくりとラヴ
トラブルは付き物憑き者ラヴだけぢゃないもの
ビューティーなんだもの彼女それに纏わる僕ら
“ルシファー!”と馬鹿にされたって光運ぶ僕ら
“ルシフェル?”と呼び止めたって捕まらない女
満月半月三日月、否、満ヴィーナス半ヴィーナス三日ヴィーナス
──“I'm a Venus Loon.”
恋多き女が消え去った
醜悪な男ら消え失せた
また自由がやってきた
我らに自由やってきた
牡牛と天秤の民達から
金星の女神は祝福され
その報いに我ら愛と美を与えられん
7. あたかも無重力
たった24時間で一日が終わるとか
地球みたくぱっぱか行きませんよ
こっちはそっちの243日が一日で
でも逆に一年は短過ぎるみたいで
224日と14時間で一年終わりです
365日と4分の1日が長過ぎなのよ
それから僕の体重は60キロ前後で
でも地球だと70キロ前後になって
健康診断で“少し太り過ぎ”だとか
地球の皆さん、こちら0.88Gなんすわ
──“I'm a Venus Loon.”
渋々と重い腰を上げて
より重たいものを担ぐ
身体より精神への重荷
一旦成し遂げたならば
重たさが気持ち良いと
重さのある程に愉快と
世界が背負ってくれる
皆が背負ってくれると
だから背負ってみるよ
喜んで引き受けた人が今泣いて引き受ける人と同一で人物宙ぶらりん
8. 金星の人々
いつか皆が安らげる様に
地球の皆も住めます様に
百合、薔薇、さくらの花
フリヰヂヤに、黒椿の華
草花の命の種を蒔く様に
植物の細胞を金星の雲に
この98%のCO2を0.1%に
いつの日にか21%のO2に
金星に人が住めます様に
金星で君と二人で暮らせます様に
──“I'm a Venus Loon.”
ちぎった生地を公園の蟻に与え
それを巣まで運ぶ行列を眺める
ジャンボシュークリーム食べ太
浮かぶ風船とシャボン玉を数え
数調整の為にレモン銃を構える
トロージャンスープ吸い取り美
三連装エクレアのミサイル伍長
食べ太の弟で吸い取り美の旦那
至近距離攻撃でクリームまみれ
ジャン・バルジャン84.7世市長
ヴィシソワーズ片手にベトベト
国とエクレア隊に怒りの生電話
わいが歌うマイスタージンガー
異国文化は戦略ゲームで覚えた
マイステルジンガイつうのかい
全くそれは誰の唄だい?えゝ?
人外の曲なんてやめてくれやい
とうそぶく彼が6.1代目D.D.I.B.S
うまい棒を29本指に差して食べている
9. 金星のアフロジニー
地球と一番距離の近い惑星であり
直径がほんの652キロ小さいだけ
“地球の兄弟・姉妹”、“双子”とか
色んな呼称で親しまれていたのに
未だ地球から誰一人やって来ない
金星人待ちきれずそちらに向かう
元地球人の火星人ジギーにも逢う
彼も火星で独り寂しかったみたい
彼は素晴らしい声で歌を聴かせた
“火星の生活”という題のバラッヅ
僕も金星人として歌ってみたいな
金星で出逢ったアフロの女の事を
それでは聴いて下さい
──“Afrogenie in Venus”
Yeah, she 死にたい少女
Yeah
やあ、云ってよ
──C'mon
詩人ジニー
やあ、読んで捨てても良い
Yeah
ふかふかの悪戯
I want a lie
I got a funny, funny, funny, funny lie
I need you, 金星のアフロジニー
金星のアフロジニー
妖精の・幼生の・陽性の・溶性の
Yo say No/Yo say No/Yo say No/Yo say No
言え
Yeah
Oh
金星のアフロジニー
妖精のアフロジニー
幼生の・陽性の・溶性の
Yo say No/Yo say No/Yo say No
Afrogenie?
Aphrogenie?
ア・フ・ロ・ジ・ニ・ー
Genie! Genie! Genie!
Yeah
~~~~~~
これが金星の“ナイン・ストーリーズ”、そして俺なりの“ジギー・スターダスト”であります。バンドで完璧なコンセプトアルバムを作ってオマージュするのもアリだけど、それはもう“ジャガー・ハード・ペイン”という大名盤があるから。だから俺は俺なりのグラムロックの理想形というのを今回、俺らしく詩でやってやった次第。ラストの“金星のアフロジニー”だけは、バンドで昔(ちょうど10年前!)に作った曲だけどね。その詩を丸々ボーナストラック的に収録って訳。気が利いているでしょう?手前味噌ながらこの詩の全体構成、気に入っております!いつもながら一行一行に意味深な何か仕込み・忍ばせ・潜ませて、一字一字を神経症的にカッチリ・キッチリ・揃えたり(毎日140字ちょうどの詩作──アンフィニッシュド・バラッズ!──その賜物ないし後遺症)、そうしないと何か作った気がしなくて、わざわざ俺がやってる意味が無いよな感じがして。
まずは平成の初年に生を享(う)け、平成の30年間は存分に子供をやり、つまり自己存在の確立への闘争、令和に入れば何も云われなくなり、そして誰もいなくなった、大人となった姿を誰にも披露する事ができなくなり、しかし孤独や孤立は孤高の感を醸(かも)し出すもの、自信たっぷりに詩作ができる様になり、もはや自己存在は確立されたという──一つの人生があって。彼は平成元年に末っ子の三男として産まれ、物分かりが悪く、分別もなく、我がままで欲深く、幼稚園や学校で諍(いさか)いや問題を起こすと友や先生や親兄弟に迷惑をかけ、働き始めても周囲への甘えや依存は一向に改善されず、“自己存在の確立”といえば聞こえは良いが、実態は“他者依存の隠蔽”、その正当化であるという──幾つもの解説があって。大変申し訳ありませんでした、Nori MBBM・金星人として音楽をやりながら、自己存在の確立をしながら、耽美・頽廃主義者として文学をやりながら、他者依存の隠蔽をしながら、今日まで宇宙人・異星人として生きてきた事の、人間の不明をお詫び申し上げますという──また一つの人生があって。
ただ一点、確認したいのは、果たして“他者依存”のない“自己確立”なんてものが存在するのか?一生とまで言わなくても、たった、一日の内で。ウィー・キャン・ビー・ヒーローズ、ジャスト・フォー・ワン・デイ。教えてよ、そのやり方を!
我が人生の秘密は、私一人だけなら非常に分かりやすく、ひと処に偏っている人間なのであるが、そこに山羊座の父と母、天秤座の二人の兄ら、彼等が居る事によって理性の方へ、双子座の、乙女座の親友、牡羊座の、魚座の恋人、そうだ客観の方へと引っ張られている、故に私が私たる、現状ややこしいものになってしまっている訳で。
何か言っている様で何も言っていないか、この文章……しかし、いや、だから、いつもここに立ち返ってくるのだ。
世間話を、他愛のないお喋りを、何かの感想を、何某かの感慨(かんがい)を、独り言を、不安定な空言(そらごと)を、インタビューを、誰かからの問いかけへの答えを、実は、本当は、ただ個人的な、ただただ私的な、後で見返す価値も無い振りをしておいて、後で見返したら私だけが把握できる真実の横たわる、メモ代わりにしている。忘れたくなくて、覚えておきたくて、だから忘却しておく様に憶えておきたくて──我が外部化、さながら金星に置いてきた幼少時代のよう。
サイエンス・フィクションですけどね、ほらSFですよ、つまり“すこし・ふしぎ(by 藤子・F・不二雄)”の略なんです。君の幼少の記憶もそうだよ?しかしだな、そりゃ別の云い方で、すっごいウソになっちゃうか!SF=スーパー・フェイク。こりゃ困ったな、四月馬鹿(エイプリル・フール)に。少し不思議=凄い不可避。だって僕は、金星馬鹿(ヴィーナス・ルーン)よ。ホントなんだってば、五月馬鹿!?





