──金色(こんじき)の秋と午後のように、わたしの隠栖(いんせい)の心のように、それは熟した。──そしていま、おまえは語る。「世界そのものが熟した、葡萄(ぶどう)が色づくように、──
──いまやそれは死のうと願っている、幸福のあまり死のうと願っている」と。おまえたち高人よ、おまえたちはその匂(にお)いを嗅(か)がないか。ひそかに湧(わ)きのぼってくる匂いを。
──永遠の香り、永遠の匂いを。古い幸福の匂いを。ばらのように至福な、褐色をおびた黄金(こがね)の葡萄酒の匂いに似た幸福のその匂いを。
──酔いしれた、真夜中の臨終の幸福の匂いが、湧きのぼってくるではないか。その幸福が歌うのだ。「世界は深い、昼が考えたより深い」と。
-ツァラトゥストラ
何回か、幸せで死にたいと願った──ずっとこのまま、生きていたいから。例えば、恋人と寝ている時など──ずっとこのまま、死んでいたいから。
時間を無駄にすればする程、幸せを無下にすればする程、夢と永遠と近くなる、夢と永遠に似てくる。
夢に永遠に、近似してくる。
昨日16日は、愛しの我がビューレイ兄弟の誕生日でした──おめでとう、おめでとう──天秤の左右の両方に。
そして、同じく天秤座生まれの大江慎也さん率いるザ・ルースターズのカバーMVで御座居ます。ルースターズと私の出逢いはミッシェル経由でなし、ボウイの布袋さんのインタビューで知ったのがきっかけだったはず(布袋さんと花田さん、一緒に演ったりしていたよね)。
初めて聴いたのが何歳かは明確に覚えていないが(高3か大学1年の頃だから18歳前後か)、学校の夏休み中の8月だったのはハッキリ覚えている。というのも、初めて買ったのが2枚組の「ベスト・ソングス・コレクション」という日本コロムビアの企画もの(他にレッド・ウォーリアーズのも持っていた)で、今は亡き大森のレコファンで中古で買って、家に帰って親父のオーディオプレーヤーに即セットして、ガリガリ君(ソーダ味)を汗だくで食べながらハァハァと貪り聴いていたんだけど、開いていた歌詞カードの上にガリガリ君の半分をボトッて落としちゃったんだよね……急いでガリガリ君拾ってティッシュで拭いたんだけどさ、買ったその日に歌詞カードふにゃふにゃ(←人間クラブぢゃないよ)になっちゃって、めちゃくちゃ凹んだ記憶。
しかし“恋をしようよ”、“どうしようもない恋の唄”、“レザー・ブーツ”、“シッティン・オン・ザ・フェンス”等々、いわゆる初期ルースターズの漢気に“腑抜け野郎の脳天をたたき割れ”されちゃって(←ファーストの帯のタタキね)、それからアルバムを一枚一枚買っていったよね。
今も外袋(ビニールカバー)付きで大切に保管してあるルースターズの名盤達
今回、どの曲をカバーしようかと滅茶苦茶に悩んだ。正直言うと各アルバムにそれぞれカバーしたい楽曲があって、昔ギターでコピーして宅録デモを作ったり、前バンド・MBBMでレコーディングしたり、他のバンドより馴染みがある分かえって迷ってしまった。
前述した通り、以前は“初期ルースターズLOVE”だったのですが、ギターの花田さんがフロントマンとなる後期まで全て聴いて、今では中期ルースターズが一番好きで、“全アルバムから一枚選べ”と云われたら4th「ディス」一択であり、今回の選曲と相成った訳です。
いや、3rd「インセイン」の大江さんが常軌を逸し始めた狂気の前触れが如く不穏な音像も、6th「ファイ」の今にもバンドが崩壊寸前で危うく張り詰めた感じも(“ラスト・ソウル”のイントロのアルペジオと大江さんの歌でいつも胸が張り裂ける)、大江さん無き7th「ネオン・ボーイ」のグラムロック&ニューウェーヴな80sポップ感も(下山さんのねちっこい変態ギターとボーカル最高)、8th「カミナリ」の花田さんが漢らしく引っ張って行く粗削りなギターロック感も、全てが完璧。こんなロックの歴史を網羅した様なディスコグラフィーが作れたら、バンドマン冥利に尽きるよな。
上にある「ディス」のジャケ写をイメージして、カバーMVして来た
繰り返しになりますが、本当に4th「ディス」が一番好きなアルバムで、全トラックが名曲、曲の流れもタイトルもジャケのデザインも全てパーペキ(かつてやった“人生名盤10選”に入れ直したいくらい)、この高揚・興奮・嫉妬・焦燥を少しでも消化したいが為にカバーMVした、と言っても過言ではありません。
ちなみに「ディス」のジャケ写は、山梨県にある渓谷で撮られたらしいのですが、ギター担いでそこまでは行けなかったので、ちょい手前の奥多摩の渓谷まで行って参りました(我、元山岳部・部長なり)。
鳩ノ巣駅から渓谷を目指す道中
厳密に言うと奥多摩駅まで奥へは行かなくて、イメージしていた渓谷のある鳩ノ巣駅で降りました。
あら素敵、木のトンネルよ
駅から舗装された山道をとぼとぼ2、30分は歩きまして、途中でガードレールの向こう側にある細い道に逸れると登山道へ入れます。
森の其処彼処に人の気配がありました
4時間ほど山の中で撮影しましたが、平日の中途半端な時間に行ったので、出会った人はたった5人だけでした。
渓谷へ降りる途中、道中安全の祈願で手を合わせる
ギター担いでヴァンプな革靴にトレンチコートという、完全にナメた格好で登山したので(決してマネしないで、皆はちゃんと山行きの格好で登ってネ)、行きも帰りも慎重にゆっくりと歩いて行きました。
動画のサムネとは別テイクの写真、鳩ノ巣渓谷イイ感じ
今回の我がカバー演奏について特筆すべき点があるとすれば、この曲を象徴するヤマハのシンセ・DX-7によるイントロの印象的なフレーズを全てエレキ(赤いストラトちゃん)で弾いたこと、それから曲中にミッシェルを入れたこと、の二点かな。
原曲の一回目のBメロ部分で大江さんの英語の語りが入るのですが、いつも何て云っているのか全然聞き取れなくて、試しにミッシェルの“サンダーバード・ヒルズ”のあの一節をシャウトしてみたら違和感がなかったので、それでいかせていただきました。
過去のカバーMVでもイエモンの曲の後にロッキーホラーやったり、T.レックスからのプラシーボとかしていましたが、こういうマッシュアップぢゃないけど、因縁めいたものを一緒くたに纏(まと)めるの好きなんです。今回に関して言えば、ルースターズあってのミッシェルだと思うから(異論は認めん)。
大好きな天秤座のロッカーがまだまだ沢山居るので、次回のカバーMVも天秤座生まれの誰かかな、と思案中。今のところ、蟹座のあの方もあり得るかもしれんが。
改めて、愛しの我がビューレイ兄弟に、またボウイの兄のテリーに、そしてニーチェを読んでいたという大江さんに──おめでとう!!おめでとう!!──天秤の左右の両方に。
それではまた⚖
0 件のコメント:
コメントを投稿