2020年9月23日水曜日

俺の夢の箱庭

わたしの最高の希望は、語られぬまま、解き放されぬままだった。そしてわたしの青春時代の幻影と慰めのすべては死に絶えた。
 いったいどうしてわたしはそれに堪えることができたか。どうしてわたしはこういう傷に堪え、それに打ち勝つことができたか。どうしてわたしの魂はこれらの墓の中からよみがえったか。
 そうだ、傷つけることのできないもの、葬ることのできないもの、岩をも砕くものが、わたしにはそなわっている。その名はわたしの意志だ。それは黙々として、屈することなく歳月のなかを歩んでゆく。
-ツァラトゥストラ

 つらい時は思考停止に限るが、ただ考えないという訳では無い。人のサイズ感で、人間のスパンで、モノを考えないというだけで、いつも考えては居る。岩を手で砕くのは難しいが、石なら砕けるかもしれないし、意志がいちばん砕けるだろう──墓に閉じ込めたって無駄だ、岩も石も変わらねえ。

 お前にとってはいざ知らず、俺には簡単なこと──現に墓から黄泉帰り、ここに夢の箱庭を作り出すなど。


 渋谷センター街を抜けた処のビルの4階にそれはある。井の頭通りと宇田川通りの狭間さ。


 上りエスカレーターはあるが、下りエスカレーターは何処にもないから気をつけろ(帰りは必ずエレベーターだ)。


 入り口を抜けて、右手に広がるは邦楽コーナー。昔付き合っていた彼女に貸してもらったクラムボンのベスト盤が店内BGMで流れていて、「レコファンったら、粋なことを」と青春が爆発!!


 そして反対の、左手に広がるは洋楽コーナー。こちらではまた別の店内BGMが流れていて、それは大学へ通う電車の中で毎朝聴いたスウェードのベスト盤。「レコファンったら、粋なことを」とまたもや青春が爆発!!


 来月閉店するレコファンへ、最後のお別れの挨拶をするはずが、十代、二十代の音楽や恋物語の走馬灯、その再生ボタンを押されてしまい♪細胞膜に包まって3分間で40倍……フラッシュバック!!(アジカン)って感じ。


 T.REXのアルバムもスウェードのアルバムも、ミッシェルもハイロウズもマッド・カプセル・マーケッツも、渋谷のレコファンで買ったのだ。

 レコファンだけで言っても、自分の部屋というか実家というか雑居ビルにひっそり構える薄暗いアジトの趣(おもむ)きがあった大森店(ボウイやルースターズ、すかんち、イエモン、ゆらゆら帝国に9mm、エアロスミスやモトリー・クルー、メタリカ、ニルヴァーナを買った処……音楽人生の始まりの場所だった)、そして渋谷店くらい大きく明るいフロアでスーパーのダイエーの上にあった横浜店(オリジナル・ラブとか椿屋四重奏に、スレイドとかパルプとか買ったっけ)、西武の方にあってそこそこ大きかった新宿店、閉店間際に何度か行った小さな川崎店、と何処で何を買ったか、ドキドキしながらCDを手に取った瞬間のこと、はっきりとした店内の風景や自分の気持ちまで、不思議と色々覚えている。


 オアシスも渋谷のレコファンで買ったな。名盤と云われるファーストを遂に買って、帰って聴くぞ、世界のバンドがなんぼのもんぢゃい、みたいな。思い出すだけでドキドキするわ。

 大学に入って、ジャンル分けが徹底していて買い物しやすいディスクユニオンに浮気する事も多くなった(というかユニオンも思い出ありまくりだ)が、全ての始まりはレコファンだった。だから本当に、想い出を思い出せる空間が物理的に無くなるというのは、心にぽっかりと穴が開くようで、大切な人に二度と逢えなくなるようで、ゆっくりと話すのも叶わぬが如く、さびしい。


 こちらは渋谷店のレジカウンター、コロナ禍になってから初めて来たのでビニールシートなどありますが、学生の頃からずっと変わらぬまま。今回はCDレコードの他に、レコファンのトートバッグを記念に買って帰ろうと思ったが、売り切れ御免でした(考えるこたぁ皆同じ)。


 レジカウンターのすぐ隣に、帰りの唯一の手段となるエレベーターのフロアがあって、ここは格安(100円)レコードコーナーでもあるのだ(特に掘り出し物はなかったが)。


 前にツイッターの方では呟いたけど、渋谷のレコファンには“レア盤コーナー”というのがあってね。安くても5000円とか、高いと4~5万するCDレコードが置いてあって、一度も買った事は無かったけど、レア盤コーナー見るのも伝説に直接触れるみたくドキドキしたな。

 スピッツのインディーズ盤「ヒバリのこころ」が2~3万で売っててね、曲目だけ眼に焼き付けて買えずに帰った想い出。他にもスターリンとか赤痢、あぶらだこ、タイマーズ、BUCK-TICKのインディーズ盤が置いてあったりね。

 今回、久しぶりに来たらレア盤コーナーは無くなっていたけど、普通のCD棚から何枚か高価なレア盤が出てきた(写真は“裸のラリーズ”で2万円)。もちろん買わなかったです、買えなかったです!!


 いつもなら1~2時間滞在のところ、今回は4~5時間も店内をぐるぐると(しかし体感約30分のトリップ体験)。冒頭のナイス選曲な店内BGMも余裕で最後まで聴いてしまって、その後は全て知らん曲になってしまった……

 さて今回のお買い物ですが、(写真左下から時計回りに)まだ持っていなかった名盤として“ラーズ”唯一のアルバム作品、そしてアルビニ率いる“ビッグ・ブラック”の最後のスタジオアルバム、あとは学生時代にファーストアルバムだけ買ってよく聴いていた“ヘヴィー・ステレオ”のEP集、邦楽からはニッチでキッチュで変態お洒落なユニット“ミスゴブリン”のセカンドミニアルバム(ファーストミニアルバムは学生時代に買っていて、今でもたまに聴きたくなる名盤)、これら閉店セールで全て値札から200円引き(有難や)。ゆっくり聴かせて頂き、Nori MBBMのカバーMVシリーズ、その芸の肥やしにいたします。

 レコファンよ、沢山の出逢いと想い出をどうも有難う。おかげで様々な人生の扉が開かれた!!四・重・人・格(フー)

 唯一残っていた渋谷店の閉店告知の際に「これからは通販の方でやっていきます」とあったので、そっか時代の流れはそうだもんね、と思っていたのですが、何と秋葉原に新店オープンするみたい(もうしてる?)。これで寂しい気持ちは多分、大丈夫。また行くぜ、レコファン!!


 皆様も是非に ※お店の回し者ではありませぬ

 ドグマッ


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