2023年7月25日火曜日

オルタナ畑でつかまえて(The catcher in the nevermind) –我、令和オルタナティヴⅢ–

「未成熟な人間の特徴は、理想のために高貴な死を選ぼうとする点にある。これに反して成熟した人間の特徴は、理想のために卑小な生を選ぼうとする点にある」
-ヴィルヘルム・シュテーケル

 私がTHE YELLOW MONKEYというバンドを好きなのは、グラム・歌謡・メタル・野郎だからというのは無論、詩曲や佇まいに言動それから“イエローモンキー”という名が示す通り、日本人が避けられない日本人というものを自覚的に演っている日本のバンドであるからに他ならない。三島や谷崎を読まずには居られないのと同然の道理である。

 このどうしようもなく日本人な、どうしようもない日本人はまた、日本語に聴こえてしまう外国語の、日本語で歌われるに相応しいよな旋律の、そんな洋楽につい惹かれる(マーク・ボランとかイアン・ハンターは時たま日本語で歌ってなあい?本当に私の空耳かしらん)。こちらはまた、バタイユやバルザックを読まずには居られないのと同じ訳である。



 BUSTERSないしピロウズフアンにとっては退屈で冗長な導入部となったやもしれぬが、私が今までピロウズを通って来なかった理由を明確にし、また今回カバーするに至った訳を打ち明ける為にも、この回りくどい前置きが適当だと判断したのである。

 つまりだ、私はこうも日本人した日本人なので、昭和歌謡やジャパニーズポップスなどと“故意に”断絶しているオルタナティヴロック(=邦楽に代替するロック)を演っているザ・ピロウズという日本のバンドを聴いて来なかった訳であるが、染みたれた四畳半の情景を想起させ“ない”ピロウズの、さわおさんの何処迄も風通しの良い日本語詩の響きに洋楽を感じた時、私がマーク・ボランの詩や節回しに日本を感じたのと逆向きに照応する形で、今回ピロウズをカバーしようと思ったのである。

「アリーが死んだことは僕だって知ってるよ!知らないとでも思ってるのかい、君は?死んだからって、好きであってもいいじゃないか、そうだろう?死んだからというだけで、好きであるのをやめやしないやね──ことにそれが、知ってる人で、生きてる人の千倍ほどもいい人だったら、なおさらそうだよ」

 私は何でも、超越するもの、調節するもの、境界に佇むもの、共感せざるを得ないもの、に否応なく惹かれる。中途半端を嫌な言葉とは思わぬし、優柔不断は何とまあ美しい態度であろう。断定や断言など、何時だって馬鹿に任せておけば良い。何処かの誰かが言ってたろう、最も美しい女というのは適度な男性性を持ち合わせ、逆もまた然り、適度に女性性を併せ持った男というのは美しいものである、と。中性的なグラムロックを好きにならずに居られないのも、そういうこった。グラマラス、つまり魅惑的なもの、その魅了してくるものに、平凡な人の私は惹かれる他ないのだ。



 ピロウズといえば、三期だろう。メンバーやフアンはピロウズというバンドの歴史を全四期に分けて、音楽性の変遷その全貌を捉えている訳だが、バンドのブレイクのきっかけとなり、飛ぶ鳥を落とす勢いで次々と画期的な新曲・新譜を発表していたのが、ニルヴァーナやピクシーズに代表されるUSオルタナ直系のギターロックサウンドを展開していた三期(1996~2012年の間)なのである。その頃を象徴する様なナンバーを演りたくて、今回この選曲に落ち着いたって訳。

 影響を受けた先輩バンドにコレクターズの名を挙げ、影響を与えた後輩バンドのボヘミアンズを自身のデリシャスレーベルに擁す、このピロウズというバンドの存在を鑑みれば、一期(1989~1993年の間)のパンクでモッズな音楽性は腑に落ちる。

 反して二期(1994~1996年の間)、ジャズやボサノヴァ的な凝ったフレーズを繰り出すギター、ベース、ドラムetc.……ピロウズにして意外でしかない(モッズ的といえば、さもありなんではあるが)。こんな時代があったのか!と三期のイメージしか頭になかったエセBUSTERSの私はあんぐりしてしまったが、これがどうして聴き心地、最高である。ジャズやボサノヴァなどと抜かしちまったが、楽曲によっては幻想的でサイケな瞬間もあって、個人的にはそこに90sシューゲをひしと感じてしまい(そして手前は隠れシューゲイザーだから)、このピロウズ結構好きだ。二期は、今後の己が研究課題である。



 んで、本題の三期。5枚目のアルバム「プリーズ・ミスター・ロストマン(1997)」から今に続くピロウズの全てが始まったかの様な評を多々目にしたのだが、まだ二期の穏やかさや優しさ、奥ゆかしさを引きずっている様に思う。ピロウズが攻撃態勢に入ったのは、6枚目の「リトル・バスターズ(98)」からであろう。アルバムのジャケットでもう既に勝ち、はい優勝(ライオンが凄む檻の前で外国の少年がアイスクリンをペロっ)。一曲目から歪みまくったディストーションのグランジサウンドにメタル野郎はブッ飛んだぜ……カバーMVするならこれしかねえ!

ものによっては、いつまでも今のまんまにしておきたいものがあるよ。そういうものは、あの大きなガラスのケースにでも入れて、そっとしておけるというふうであってしかるべきじゃないか。それが不可能なことぐらいわかってるけど、でもそれではやっぱし残念だよ。

 どんなバンドにも大なり小なり長きにしろ短きにしろ黄金時代ってもんがあって、ピロウズのそれは7枚目の「ランナーズ・ハイ(99)」と8枚目の「ハッピー・ビバーク(99)」なんでねえか?ってのが手前の持論である。笑っちゃう位に無敵、やりたい放題を神から許されている感じ──マリオにおけるスター状態。しかもその二枚共を同じ一年の間に出しているというのも凄い話だし、きっとそれはあの頃の世紀末的な狂騒がバンドの勢いを更に後押ししたのだと思う。イエモン、ミッシェル、ブランキー、ハイロウズ、みんな軽く躁状態だったぢゃん?ミスチルが「ディスカバリー(99)」みたいな全編ギターロックで尖りまくったアルバム、もう二度と作らないと思うぜ。全くどうかしてるぜ、90年代──「電波少年」とか「めちゃイケ」とか無性に観たくなる時があるんだよ、小学校の教室の窓から工場の煙突がもくもくしているのを朧気に見たみたく!授業が余りに退屈過ぎた時、誰も居ない校庭を見たくもないのに見たみたく!

拍手ってものは、いつだって、的外れなものに送られるんだ。

 閑話休題。9枚目の「スマイル(01)」も素晴らしいよ、アルバムからのシングルカットが一曲もないっつうストイックさ。実を言うと今回、“ハロー・ウェルカム~”でなし“ウェイティング・アット・ザ~”を演ろうと思っていたんだけど、今は手前のオルタナ欲がすんごいもんだから、迷いに迷って前者にしたのさ(後者は来年辺り演ると思うね)。それから“スキム・ヘヴン”なんてゴキゲンなナンバーは、ミッシェルに衝撃を受けたさわおさんなりの“キラー・ビーチ”なんかな?などと邪推してみたり。



 その後、10枚目の「サンキュー・マイ・トワイライト(02)」でピコピコ電子音が入ってきたり(今回のMVのオチとして弾かせて貰いましたワ)、11枚目の「ペナルティー・ライフ(03)」からはグッとルーツミュージックとしてのロック、つまりロックンロール志向になったり、14枚目の「ウェイク・アップ~(07)」ではまたオルタナに回帰したり、そういえば手前がまだピロウズを聴いていなかった頃、高校の友達(山岳部のSくん)が静岡だか名古屋だか遊びに行く道中にカーステでこのアルバムを流してくれて、「これ良い曲ね、何て曲?」と訊いてみたらば「んと、“シリアス・プラン”って曲だよ」って教えてくれたり、前のバンドのギターがカラオケ行くと「この曲カッコ良いっすよ」って“ライド・オン・シューティング・スター”を歌ってたなとか、そもそも今使っている赤いストラトをくれた高校の親友が代表曲“ハイブリッド・レインボウ”を教えてくれたんだっけとか、思い返せば節目、節目でピロウズを薦めてくれる人が何時も自分の周りに居て、それは自身のオルタナギターロック好きが滲み出ちゃっていたからかしらん?ひええええ自分語り語り過ぎて四期まで語れる気がしねえザ・ピロウズ!とりま、さわおさんの英語詞と己が日本語詞のせとくわ。


「Hello, Welcome to Bubbletown's Happy Zoo –Instant Show–」
作詞・作曲:山中さわお

Greedy pig, Idle monkey
Perfect bat
Lazy bear, Intelligent fox
Stylish dove

Modern mouse, Prosy elephant
Honest duck
Oh, fantastic!
I'm never tired of looking at them
Come on

Float like a butterfly
Sting like a bee

Hello, welcome to bubbletown's happy zoo
Instant show

Fat deer, Slim tiger
Drooping giraffe
Cross dog, Fishy pussy cat
Sunburned crow

Clever sheep, Jolly panther
Standard owl
Oh, fantastic!
I'm never tired of looking at them
Come on

Float like a butterfly
Sting like a bee

Hello, welcome to bubbletown's happy zoo
Instant show

Guilty man, Guilty woman
Innocent child
Oh, fantastic!
I'm never tired of looking at them
Come on

Come on
Come on
Come on
Come on
Come on
Come on


日本語詞:Nori MBBM

欲豚、横着猿
完璧蚊食鳥
怠惰熊、知的狐
当世風鳩

近代鼠、散文的象
正直家鴨
驚き!
飽きないね
何時迄も
Come on

舞う蝶の様に
刺す蜂の様に

Hello, welcome to bubbletown's happy zoo
Instant show

太鹿、痩身虎
垂下麒麟
雑種犬、魚介仔猫
日焼烏

賢明羊、上機嫌豹
標準梟
驚き!
飽きないね
何時迄も
Come on

舞う蝶の様に
刺す蜂の様に

Hello, welcome to bubbletown's happy zoo
Instant show

罪男、罪女
無罪餓鬼
驚き!
飽きないね
何時迄も
Come on

Come on
Come on
Come on
Come on
Come on
Come on



 ちょうど去年の今頃に知り合った友達が、もう今の私のピロウズの先生なのね。知った風な口で一期だ二期だ語っちまったけど、この一年でピロウズのこと猛勉強したんだわ(←唐突にベンジー)。その友達から“アイシンク・アイキャン”とか“ワン・ライフ”とか“リトル・バスターズ”など教えて貰って、シンガロングなオアシスのギャラガーで三男が私は甚(いた)く感動してしまってね、追い打ちを掛ける様に「ニルヴァーナ好きならコレっすよ」って怒涛の波状攻撃が私を“カーニバル”まで“ラッシュ”させた挙げ句“ノー・セルフ・コントロール”状態にまで“空(←インスタント・ミュージックのMVで珍棒振り回していたクマっぽい何か)”させてしまい、我、令和オルタナティヴそのⅢに至った訳で御座居ます。今回のMVの撮影はその友達にやって頂きました──牡牛座・愛・爆発──誠に有難い事で御座居ます。圧倒的感謝!!ドグマッイヤァオ(MBBMと中邑真輔)

僕は例の赤いハンチングをかぶり、僕の好きなようにひさしをぐるっと後ろへ回し、それからありったけの声を張り上げてどなったんだ──「ガッポリ眠れ、低能野郎ども!」ってね。



 あの頃の“ボキャブラ”も“ガキ使”ももう無えさ!“Mステ”も“うたばん”も“HEY!HEY!HEY!”も“CDTV”も用無しだ!“ロキノン”ないし“ジャパン”その二万字インタビューもな!ってな気分で──CORPORATE MAGAZINES STILL SUCK (As Worn By Kurt Cobain, NIRVANA)

どこかを去って行くときには、いま自分は去って行くんだってことを、はっきり意識して去りたいんだな。そうでないと、なおさら気分がよくないもんだぜ。
-ホールデン・コールフィールド




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