高橋新吉を読んだ事は無い。「ダダイスト新吉の詩」を一頁(ページ)も繰(く)った事が無い。だのに、滅茶苦茶に影響されているのは知っている。
父方・母方の祖父、祖母の生い立ちや馴れ初めをよく知らない。しかし、よく知っている父、母より自分に似ている気がする、それと同じ道理で。つまり、新吉に影響されて“ダダさん”となった中也の詩は(発表されたものも未発表のものも)よく読んだし、よく知っている。その二番煎じぢゃ仕様が無いから、逆張りをして新吉に似てしまうのだと思うし、祖父、祖母の隔世遺伝を強く意識してしまうのであろう。
「ダヾヰスト憲宏の詩」
by Nori MBBM
1. ヰントロダクシヨン
山羊と山羊、山羊の詩なら、父と母
“ヲギヤア”
──否
“ヲンギヤア”
──否
“(※1)てんぽにゝんがし”
──三たび、否
“ダヾヰスト憲宏の詩”
2. 洒落た人生
例へば五月一日に生まれし人あり
その人は何でもかでも結び付ける
語呂合はせの要領で
こい、来い、恋とか
日々その選択この衣食住を為すに
彼の男は何でもかでも結び付ける
語呂合はせの容量が
一杯/\になるまで
日々その洗濯この人間性を成すに
彼の女は何でもかでも引き剥がす
恋をしまくるのなら
失恋もまたその分ね
春と修羅、春と氷柱、春とツアラ──ダヾはシユウルに奉る
シドは五月、ダリは五月
ボクは五月、だから何?
R. マツト──1917──泉
ダヾは一切を否定するんだろ?
ダヾはダヾをも認めないのだ!
ただの相槌、ただの挨拶
ただの木馬、ダヾは何?
R. マツト──1917──泉
といふ事は、木馬は後ろだな?
木馬ならこの目で確かめたい!
ダヾ無意味、ただの意味
無意味といふ意味が意味
R. マツト──1917──泉
ダヾとは違ふのだよ、ダヾとは
ダヾの中で……ダヾを忘れた……
春とツアラ、ツアラトストラは、金の星──牡牛と天秤を司る
3. 祖父のコヲト
君の誕生日が私と一緒なら
特に言ふ事は無いのだがね
大体が違ふから説明の為に
こんな詩作を試行錯誤して
伝はらんもんを伝へようと
あつ、これ?手前のノヲト
草書体の己が生ひ立つ経歴
でも君にや読めないでしよ
行書体の筆が匂ひ発つ偏歴
これでもう読めるかしらん
楷書体の愛が奮ひ勃つ履歴
あつ、これ?祖父のコヲト
4. 道化・動機・放棄
自意識過剰や自惚れ屋
自信家にならなきやな
詩作は出来ませぬとな
“こんなに大きくなつたのねゑ”
散策をしながらですな
詩を認めるにネタ探し
これが見当たらぬとな
“もう今から将来が楽しみだわ”
最後の切り札手前だな
ほら俯瞰鳥瞰宜しくな
詩作が手前を創り出す
“また一歩、死に近付いたのよ”
5. 倦怠を握られた男
恋喰らつた時分
眠れないんでさあ
肌荒れて血色悪いでさあ
握られて抜かれまくつてさあ
KAMI抜けて老けて見られてさあ
もう恋人の居る訳も無いんでさあ
しかし晴れやかでせう
身も心も軽やかでせう
でしよう皆かうでせう
ノスタルヂツクでせう
勝手に懐かしむでせう
昔は平和だつたでせう
いや、それが昔の方がね……
もう恋人の居る訳も無いんでさあ
髪も抜けて老けて見られてさあ
握つては抜きまくつてさあ
肌荒れて血色悪いでさあ
眠れないんでさあ
恋喰らわぬ自分
自分以外に握られた倦怠はもう
手に負へぬ!
6. 割愛の儀
永続する恋は無い!
──悲観論ですか?
いや、楽観したとて愛の奴が!
──邪魔するんですか?
……話をまとめませう
つまりかうです
一、恋は永続しない
一、君は恋をしてゐる
一、だから君は永続しない
──それは間違つてゐます
私が恋してゐるではなし
私が恋されてゐるのです
君もさては愛の奴か?
──それはわかりません!
7. 非愛玩動物
柴犬が好きなのね
きつね色の愛い奴
黒目がちで全く今
何考へてゐるのか
見当も付かぬ奴よ
今すれ違つたのね
飼ひ主とも私とも
誰とも違ふ方向を
誰も居ない方角を
見つめてゐた奴よ
問ひ質してみたい
何が見えたのかと
何も云はないでと
何も言はない奴よ
三角耳の賢い奴よ
三角顔の愛い奴よ
三角形の不思議よ
私の底辺と高さを
掛けた処を割つて
でも分からない!
8. 割礼の儀
一献、二極、三昧、四韻……
歴史は繰り返す、と
そんな当たり前の事を
埋没してしまつたのか?
自然、当然、当たり前にね
今に始まつた事ぢやねゑぞ
恋とか愛とか五月蝿いねゑ
今に始まつてやつちまふぞ
怠けるもんか一日足りとも
当たり前の事を何故かうも
皆して有り難がるんだ?
有り難いなら滅多にね
喜んではゆけぬ、と
五鈷、六界、七条、八重……
9. 五十歩百歩千歩万歩
食へ──
(※2)めんでゑこと、退屈なこと
言つて自ら酔つてんだから
世話無いわ
そんな異論あり
喰へ──
原始人サヰドからデヰスり
云つて己が酔つてんだから
世話無いわ
こんな反論あり
その言葉、論争自体が文明の自覚を持たないで
この言葉、論争自体が以前の立場を取らないで
九衛──
めんでゑこと、退屈なこと
語つて我ら酔つてんだから
世話無いわ
みんな持論あり
全ては歌詩と変はらんから
10. 太陽さん/\月らん/\
と或る男の告白──
私が魚介類を口にしませんのは
生ぐさゝといふ事にしといてよ
でも食べられないのは本当です
(その頃、天上では)
太陽さん/\月らん/\
異論・反論・持論も無い
太陽さん/\月らん/\
陰陽・引用・関係が無い
太陽さん/\月らん/\
詩人・微塵・関係が有る
全ては月の光と大差無いから
11. 不燃ごみ/有害ごみ
と或る男の告白──
私が魚介類を口にしませんのは
海へと帰つた時を考へての事よ
でも土に還るつもりだし嘘です
(その頃、地上では)
燃やすなら恋が良いよ
燃やせる内の恋が良い
燃えた後の煙で咽るが
燃えた後の余韻も良い
愛とか欲など燃えんもんは燃やすなや
12. 十二行詩
この詩でもつて十二編とな
もう一編は余計でせうなあ
どれくらい余計かと言ふと
あ、さうだ、今迄の十一編
現代の物理化学の見地から
検討してみてくれませんか
それで詩の一編でも出来て
芸術に値するか見てみたい
学問してみたかつた処でさ
さうかうする内に十二編目
何も語らぬまま終わりそう
こりや余計だつたかしらん
13. 呪ひの13連装カノン
人間関係を最優先としないまでも
無下にはしてこなかつた
しかしこゝに作品だとか並べると
無関心でしかなかつたと
人間関係にきつと無関心であつた
人の事を嘗めてゐたのだ
詩や随筆や小説や詞曲の小節やら
書いてゐると不満が残る
その箇所どうにかせんとゝ足掻く
書き足し継ぎ足しをする
これが人間関係の不満の箇所なら
いつそすぐに削除をする
そんな事しない方が良い気もする
作品では一切やらんから
或いはこれを正当化する為にだな
作品で断捨離をするのだ
あゝ恐い怖いと躊躇するのはだな
作品関係が最優先だから
ダブルスタンダアドの二枚舌だな
このまゝぢや最低だから
しかしこんなあけつぴろげにだな
みな吐露して作品だから
やはり人間関係より作品が大事か
痛くも痒くも無いもんな
フアツシヨン孤独だ寂しくないだ
呪はれた13番目だもんな
14. 読書の時間です
他愛の無い話をされて怒つてゐるんぢやない
他愛の無い話はむしろ好きだ
他愛の無い話の振りをして
他愛の有ろうとするから
恩師でもねゑに説教せんといてください
さもなくば講釈を垂れます
全く一編の詩にもなりやあしない
全き詩人がどうにか読ませてみせますが
全て詠ませてみせますとも
15. 詩作の時間です
むかつくことがありすぎて
詩作どころぢやあない
綺麗な言葉を冷静に選べない
綺麗事を言ひたいんぢやあない
それぢやあいつとおんなじだ
詩作どころぢやあない
神の御告げや御神託あたり
その実コピヰ&ペヱストばかり
そんなにヲリヂナルがうらめしいですか?
16. 寸劇“大言壮語”
そのまゝ大口を叩いとれ
間違つても弱音は吐くな
余計胃にむかついてくる
そこはせめて強気で居ろ
同情どうぞ/\結構だと
飲み込め/\呑み込んだ
名言で飲み込もうと悲劇
名言に呑み込まれる喜劇
どんな言葉も君よりかはでつかいのでした
脳髄や言語による大勝利
弱肉強食の断絶と転覆と
身体能力に超越的な態度
肉体は従順に劣化します
脳髄や言語による大誤算
老若男女の断絶と転覆と
自然摂理に超越的な態度
精神は汲々に烈火します
どんな言語も君よりかはちつさいのでした
17. レトリツク游泳法
海だ愛だ
いや溺れてみたかつた
でもそうすつと
海だ愛だ
分からんくなる
音楽だ文学だ
分からんくなつた試しがあるか?
まだ溺れてないんか?
すごく浅いんか?
アサヰンされてないんか?
そのコヲド進行
──潮の満ち引き
この叙述トリツク
──恋の駆け引き
黙つて泳がせてください
“君の実家の方は魚の旨い処ぢやないか?
しかし食へないなんて勿体無い!”
18. レトリツクU.F.O.
焼きそばをよく食べては太つてしまつた詩人
焼きそばで太つてしまった詩人はよく食べた
焼きそばの詩人はよく食べて太つてしまつた
“悪いのは私ですか焼きそばですか?
しかし食べないなんて勿体無い!”
19. 文字の羅列の錯覚
こゝまで聴いてくれてどうも有り難う
さぞ人の境涯といふものに想ひを巡らせた事でせう
詩人気取りが思ひ馳せる訳ねゑだらう
単なる文字の羅列の錯覚ぢやねゑか
さういふ声もあるかと思ひます
しかし一つ本当があるとするなら
たとひそれが文字の羅列の錯覚だつたとしても
錯覚させるに想ひが必須なんであります
どうやつても境涯がいるのです
20. 666
あの象徴詩ときたら
何一つ分からねゑのに
何もかも囚へようとする
呪ひつてさういふもんだな
そしてほら見て御覧なさいな
あの肖像画の闇が染み付いた顔
いや写真
いやらしい
棒とレヱルの
観念連合用ゐて
モチヰフ異化作用
高速上下前後運動す
ボヲドレヱル
ボヲドレヱル
ボヲドレヱル
ボヲドレヱル
ボヲドレヱル
ボヲドレヱル
21. 北陸道にて
コブウヽン
コブウヽン
コブウヽン
爆音にせんと逝けぬカタルシス
語らぬで死すよりカタルシス
1969年は何も無い年だつた
“ヰギイは3度、飛び込みました”
“ピヰナツバタアを塗りたくつてゐます”
“ヰギイが、また、消えました”
デトロヰトの一風景を
何故に懐かしく思ふ
1989年は何も……
“ソニツクブルウ、見せてやれ”
“ガラスのミツシヨンと揶揄された”
“アクセル、ベタ踏み、6速へ”
フシユンツ
フシユンツ
フシユンツ
22. 404
小松から馬込文士村
馬込文士村から高円寺
高円寺からまた小松
一向に辿り着けないぞ
ミシガン州まで飛行機だ
旅客機、この胸目掛け
脳内妄想まで飛んでゆけ
ピヰチネクタア一口飲んで
幼少期まで帰つて来いよ
ゴクリ/\頭に投影される
映像は幼稚園の頃と桃の香り
目の前の君が何と云つても
僕の言葉しか響かない届かない
23. 雌雄詩曲
一度やつちまへば自分のもん
自身のもんになつた気がして
悲喜交々の胸騒ぎはおさまる
憧れた習慣を眺めてゐられる
しかし哀しいかな、誰の仕業
それ何処まで行つても君の詩
真面目なもんで
どんな些細な事も
大事にしては考へた
何度やつても誰のもんでなし
他人のもんになつた気がする
悲喜交々の胸騒ぎはたえない
慣習に憧れて眺めてゐられぬ
しかし嬉しいかな、私の仕業
これ何処まで行つても私の曲
不真面目なので
どんな重大事をも
茶飯事と受け流した
24. 偉大はかくも卑小なり
神様がどれだけ偉大かを語るに
仏様はさうですかとただ頷いた
偉大いふものは卑小に見えるに
偉大より偉いのは寛大と思つた
人様がどれだけ偉大かを語るに
貴方様は卑小で居れば良かつた
誰かを食つて大きくなつたもの
丁度いま喰はれては小さくなる
25. 青年の特権
煙草吹かすばかりで
何も言はぬ女
青年ハンスとう/\気付かず
踏み切れず結ばれず
魔の山
縫物織り込むばかりで
何も云はぬ女
青年フヱリツクスとう/\気付かず
踏み切れず結ばれず
谷間の百合
暗黙の了解は婦人方の前提
言はぬで云ふでしかし
青年ノリヒロとう/\気付いて
踏み切つたが結ばれたが
山堕ちては谷間擁く
そのまゝ青いまゝ
悶えて居ろ
否が応
じき色褪せる
分る、解る、判る
26. 壮年の特権
中世つて中途半端だなと思うだらう
現代の方が徹底的で容赦ないと思う
原始から徹底してあゝ為つた時代を
原始から徹底してかう成つた時代と
山あり谷ありのどちらがどつちだろ
中世の方が山で現代の方が谷だらう
中世は地位だ名誉だ此処に極まれり
現代の方が原始に帰る中途半端だろ
身も蓋も無い性欲だらう
27. 老年の特権
多様性、多元論
多角形、多面体
多義的、多細胞
嘘嘘嘘嘘、単細胞
日本を出たら日本の良さが分かり、年を重ねたら年の……
単に好きだ、純に嫌ひだ
閑かにせい、話になりまへん
故きを温ねて新しきを知れば、以つて師と……
嘘嘘嘘嘘、単細胞
幼年の特権を取り戻せ!
28. 詩人の特権
文武両道、完璧過ぎて
魅力の無いのが人生の下手
欠陥人生、偏り過ぎて
魅了されるのが生活の下手
人生の上手は、文武に欺かれるな
生活の上手は、人生に騙されるな
もう悪い事は言はない
セツクスに迷はされるな
ドラツグに惑はされるな
ロツクンロヲルに踊らされるな
もう詞しか云はない
夢は無限大!!
何だこの嘘くさゝ
有限が何言つてんだ?
私は常に嘘を言ふのだ
この文言も嘘に含まれる
さもなくば事実も云はれぬ
これだけが真実であるとして
29. 対煩悩五鈷
用も無いのに人形を買つた
英国の近衛兵の
赤いナポレヲン
そも/\人形の用つて何だ
洋服の、冷蔵庫の、鍵穴の
必要の不可欠の
要請の不可逆の
無えのが有り得ぬつて事は
んなもの忘れ得るつて訳だ
詩集は白い紙の
初恋は黒い髪の
トラウマ忘れ得ぬつて訳だ
どちらかだけぢや不満です
赤いナポレヲン
洋服の、冷蔵庫
どちらもあるから矛盾です
んなもの行き難い真理です
詩集は白い紙の
初恋は黒い髪の
トラウマ生き難い心理です
情け無い──君が居ないと世界を帯ぶれない
30. 日々是一献
君はまるでワアグナアだな
偉大な音楽家の方ぢやなくて
フアウスト博士の助手の方のだ
人生の悩みは無さゝうだな
研究の悩みは沢山ある様だが
人間をそこから眺めて居なさい
つひに人間を創り上げたか
君たつた一人で完成させたか
ただし再び独りになるだらうな
試験管ベビヰも自我を持つ
人間界を求めてガラスを割る
君に似て彼もまた独り身となる
プラスもマヰナスも無いさ
イコヲルにしたいんだらうな
でも君は1を倒した罫線記号だ
有り難う──君が居ないと世界が締まらない
31. 梯川から来た男
ヰントロはみな“ヲギヤア”ですか
“ヲンギヤア”で良いんですか、君
さもなくば言葉を覚えてください
あんまり真面目なもんで
不真面目に怯えてみせる
あんまり真面目すぎたら
不真面目なんぢやないか
と
恥ずかしい処を見てください
実は何も恥ずかしくありません
不真面目に違ひないだろ
あんなに真面目な顔して
不真面目で居られるのは
あんなに真面目な人だけ
と
立派な部分をご覧に入れてください
実は立派の一欠片もありやしません
このバアスは一体なん/\ですか
言ふ事を云はれた事と打ち消して
リバアスですか?いやリバアです
この川を何回見たろうか
運が良くても百回くらい
たつた百回たつた百年
──哀しいか
ゆうに百年ゆうに百回
──楽しいか
髪髪髪、抜けてゆくばかりの精魂
そいぢやあ/\ドス黒い物の哀れ
また来いや、待つとるぞ
あの川を何回渡ろうか
運が良くて一回くらい
たつた一回たつた百年
──怒れるか
ゆうに百年ゆうに一回
──喜べるか
神神神、惚けてゆくばかりの性格
(※3)じよんなあ/\霊験あらたかなれ
また来いや、待つとるぞ
自づから安宅の浜辺に漂着しけり
死んだらどうもかうも無いものを
生きる方がどうもかうも成らずで
生きながら死ぬのも有りだらうと
死よりかどんな事も為るだらうと
自づから安宅の海の藻屑と生りて
紙紙紙、白けてゆくばかりの生活
やつたあ/\また新たに書き殴れ
また来いや、待つとるぞ
KAMIKAMIKAMIKAMIKAMIKAMI……
32. ゴヲストノオト
こゝからは蛇足です
のんびりと過ごす余生です
さういふ生き物になりました
てく/\と歩く滑稽な
巳年の己がやつてくる
こゝからは日曜です
何にも予定の無い日々です
毎日が日曜みたいなものです
段落だ行間だ知るかよ
知るかよと知つてゐる
歓喜に終はる傑作だ
悲哀に沈む名詩編だ
だから一つ前辺りで
終はらせておけばよ
しかしふざけたくて
さうだ終はらなくて
人生とか生活の奴等
奴等ふざけてゐるよ
こゝからは休日です
だらりんと過ごす死後です
さういふ憑き物になりました
ふら/\と漂う笑止な
禁忌の己がやつてくる
こゝからは蛇足です
何処にも前例の無い蛇です
毎日が散歩みたいなものです
頭韻だ脚韻だ知るかよ
知るかよを知つてゐる
33. 異端者の可笑しみ
悲劇の中でこれは悲劇だと叫ぶ
──これが悲劇になり得ますか
──それは喜劇になり得そうだ
悲劇の中で悲劇への言及を禁ず
喜劇もまた然り喜劇だと叫ぶな
──そんな笑ひで笑ひを獲るな
──こんな笑ひで笑ひを得るな
喜劇における汎ゆる喜劇も禁句
三島もニヰチヱも耽溺してゐた
──希臘の知をいま一つ掴めぬ
──希臘の地をもう一つ踏めぬ
ヘルデルリンでも朗読しなされ
ヒユペヱリヲンでも読みなされ
──新宿の紀伊國屋にあつたよ
──万引きしたら横尾忠則だよ
岩波から復刊されてゐたんだよ
河出もバタイユを復刊なさいよ
──丸の内の丸善にもあつたよ
──檸檬爆弾の梶井は京都だよ
空の青みが古本屋だと高いんよ
悲劇の中でこれは喜劇だと叫ぶ
──私の悲惨な毎日は愉快です
──私はさう思ひませんが神は
喜劇の中で悲劇への言及を禁ず
角川も早くバタイユを
生田訳のを!
34. 凹凸フアツク完璧
希望ばかりか絶望まで分捕られた
皆が思ひ付く様なものは皆
呑み明かした朝の倦怠や
六畳一間の寂寞や孤独
痴情のもつれや自殺未遂
命の全て漏れ無く在り来り
私なぞが演らなくとも他の誰かが
六畳一間の換気や歓喜
呑み明かさぬで眠れぬぞ
詩作における早朝の勝利や
昼過ぎては夕方が二度目の朝焼け
誰にも共有されぬ時間軸や
未だ形而下に見られぬぞ
私なぞの謎の偉業の業
独りでにずつぷりと嵌る人間の業
お天道さまが見てゐる
ほら眼に見えるもの
これにて方針立つ
何もかも勃つ
「お前やつとか」
「嗚呼あなた遂にやりましたね」
「やりましたよ」
上から声する
神なんかぢやない
ほら目に視えるもの
君だけが目撃してゐる
皆居なくなつちまつたが君だけは
完璧完璧完璧完璧
35. コンクルウヂヨン
山羊だ山羊、山羊の歌から、在りし日の歌
行き過ぎた保守は革新と同じく
──否
行き過ぎた革新も保守に違ひなく
──否
行き過ぎた保守の革新は保守に等しく
──三たび、否
“ダヾヰスト憲宏の詩”
(※1)てんぽに:桁外れに、大袈裟に
にんがし:賑わしい、騒がしい
(※2)めんでゑ:格好悪い、みっともない
(※3)じよんな:唐突な、奇妙な
~~~~~~
原稿用紙四十五枚程を三日で一気に書き上げたので、止め処無き意識の濁流に逆上(のぼ)せてしまい、推敲時も何が良いんだか悪いんだか判らなくなる位だったが、今は打ち上げられた彼岸にて、呑気に足組み横になり、後書き気分でこれ叙(じょ)する、世界で一番腑抜けになった。取り急ぎ三十五編、齢(とし)の数だけ詠(えい)じてやった。
そうだ常に念頭にある、手前のルーツが頭の片隅に。父方の祖父、祖母、母方の祖父、祖母、更にさかのぼって上の方の人、人、人。いつまでも大切に、忘れないでいたい……ダダイズムと対極の保守的な考えかもしれぬが、ダダを破綻させるのがまたダダであり、これぞダダの最たるものと考えるが故、今度ダダイストを自称した。
全ては詩集を編(あ)む為の、全き詞曲を纂(あつ)める為に──破綻破綻破綻。私は読みますとも聴きますとも、私に詠ませますとも訊かせますとも──ダダダダダダ。私は/私に、主語から目的語に成り果てた──破綻破綻破綻。ドグラ/マグラ、単なるドグマぢゃ──ダダダダダダ。
ブルトンが宣言した百年後に、憲宏が先言(せんげん)した百年前に。憲宏が残したノートの百年前に、中也が遺したノートの百年後に。
“習字ぢゃない書道だ”、“真っ直ぐに書け、ド真っ直ぐだ”とは高校の恩師(書道の先生)より、サムネの題字の為、十数年振りに書道をしたが、誰にも縛られない書道は──しかし何度も上記、恩師の言葉が脳裏に去来した──家で独り創作の為の書道は、あっという間の二時間で、それはそれは心底楽しかった……年の瀬に新しい趣味が一つ増えたかもしれない。
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