2017年3月11日土曜日

「自伝本ハンター ~ワジー編~」(←日活のB級映画的に云うと)

自伝や伝記など好き好んでよく読むのだが、先月2月に刊行された人間椅子の和嶋さんの自伝本もまた、人生という時間芸術を波瀾万丈そのままに描いていて、冷や汗あぶら汗かきながら楽しく読了する事が出来ました──そりゃもう思い当たる節の連続で。

 今までを慈しむ穏やかな文体と、これからを生きてゆく静かな熱に溢れている良著。


ワジーの自伝本「屈折くん」の表紙
※後ろのCDは、己が学生時代に聴き込んだ人間椅子のインディーズ盤とベスト盤

 手前と同じ5月生まれの美輪さんの自伝本は、春爛漫の花盛りの如き色彩と生命力に溢れていたし(故郷・長崎を形容する豊饒な語彙が印象に残っている)、10月生まれの吉井さんの口述筆記で綴られる自伝には、秋の紅葉の様な成熟した郷愁と落葉染みた諦観の美しさが、そして12月生まれの和嶋さんのそれはやはり、冬の張りつめた厳格、誠実で凛とした心意気そのものでしかなかった(夏に生まれた方の自伝本はまだ読んだ事がないけれど、きっと爽快な夏の青空の様な清々しさがあるのかしらん)──

 これら全てに共通するものは四季折々の情緒、日本人特有の風情や趣き、こぢんまりとした可愛らしさやいじらしさ、そして奥床しさやお淑やかさ。自らに打ち克った先達の伝記は、飢えた心の糧となる。


 以下、和嶋さんの自伝本で印象に残っている箇所を抜粋する──

 “運動はことごとく苦手であった。まず勝ち負けを争うということができない。ましてやドッジボールみたいに相手にボールをぶつける競技など、もうひたすら野蛮としか思えない。体育の時間は苦痛であった。”

 第一章から既にワジーへのシンパシーを禁じ得ない。私自身、昔からスポーツが苦手な原因は(内気なデブだったっていうのもあるが)、勝つ程に残酷に為れず、負ける程にプライドが許さず、で存ったからで在る。スポーツは見るのも苦手、というか割かし興味がない。

 同じく第一章より──

 和嶋先生の息子さんならスキーが上手いだろうとまたもや勘違いが発生し、僕を上級者コースに入れてしまったのだ。憂鬱だった。”

 子供の頃の疎外感や劣等感に満たされた想い出の数々が蘇ってきた──これは大好きなキューブリックの映画「フルメタル・ジャケット」に出てくるデブいダメダメな海兵隊の訓練生が大嫌いな鬼教官を射殺した後、トイレで自殺するシーンを観て以来だ。

 自分も小学校の行事でスキーへ行った事があるが、あんなもんは生き地獄であった(小さい頃の方が人間、そういうすれ違い多いよな)。行きのバスがスキー場の駐車場に停まる所から、昨日の事の様に鮮明に思い出されるぜ──

 滑っては転んでを繰り返し、びしょ濡れの手足の指先が凍えるばかりで一向に前進しない──悪夢よりも悪夢、超絶リアル悪夢──すー、っだん!すー、っだん!といった具合である(別にجمهورية السودانへ行きたいのではない)。

 学年中のビリッケツでゴールへ着いた頃には、みんな温かい豚汁を食べ終えて「もう帰ろうよお」という雰囲気であった。スキーなんてキライーである(スキーだけに、寒い)。


 他にも“想い出を共有できない”、“疎外感”という事で云えば、公園で遊ぶとなると俺の知らない遊びにみんな夢中になるし、駄菓子屋へ駆け込むと俺の知らないお菓子をみんなで買って嬉しそうに食べている。自分も周りに溶け込もうと同じ遊びをして、同じお菓子を買うものの、無理に溶け込もうとする違和は周りにも伝播・波及して、自分はとうとう誰とも分かり合える事がなかった……。

 まだまだあるぞ、周りはコロコロコミック派ばっかだったし(俺はコミックボンボンなの!)、64かプレステかの二択で派閥争いしているし(セガサターン一択に決まっているだろうが、藤岡弘、だろうが、読点までが名前だろうが、)……なんだか口にしょっぱい味がしてきたぜ。


~~~~~~


 まだ一章しか触れてないのに、話が大分逸れてしまった。ワジー本で他に印象に残っているとこ?ええ、たんと、あるよ(もう雑に列挙す)!!

・ご先祖様が石川県出身だということ(一緒!)
・イカ天時代、高円寺の大和町に住んでいたこと(一緒!早稲田通りを抜けた辺りの描写が地味に分かり過ぎて笑う)
・その高円寺時代、エキセントリックな恋人がいたこと(一緒!)
・家賃滞納したこと(一緒!大家からの貼り紙や督促に血の気が引くところも、恋人といる時はそれを忘れようとするところも、後になって滞納分をまとめて払いに大家へ謝りに行くところも、もう何もかもが)
・日本語でロックンロール、ヘビィメタルをする事に命を懸けていたこと(一緒!一緒!一緒!)

 以上、異常に感銘受けっ放し。自分のいい加減な文章で誤解を与えそうだけど、流麗で落ち着いた、とても読み応えのある本です(第三章・暗黒編が本著のクライマックスだと思います)。きっと貴方の琴線にも触れるものがあるでしょう(別にワシゃ出版社の回し者ではない)──


裏表紙には若かりし頃の鈴木さんも

 皆様のおススメの自伝本もあったら、こっそり耳打ちで教えて下さいな。


~~~~~~


 4月になったら俺は新しいバンドでライヴすっぞ!

 4月15日(土)、町田アクトだ!出番はトップバッターだ!


 めちゃ気合入ってっからね!!!


0 件のコメント:

コメントを投稿