2021年3月1日月曜日

レモネードアイスクリーッマ

令和三年三月、“Nori MBBMのカバーMVシリーズ”は、遂に30本目と相成りました。



 記念すべき今回は、“我がロック四天王”の一人であるhideさんの名曲「レモネードアイスクリーッマ」で御座居ます。黄色っぽいし春っぽい、黄泉っぽいし春に会いましょうっぽいでしょ。

 “我がロック四天王”はみな“グラム歌謡メタル野郎”と言い換えられるんだけど、hideさんも云わずもがな、グラムロック、昭和歌謡、ヘビィメタルへの愛を数々の音楽誌やラジオで語っておられました(ミーは十代の頃にインタビューもラジオの文字起こしも貪り喰らっていたので、肝に銘じているhideさんの言葉が幾つもあるワ)。


檸檬、それは梶井云う処の爆弾
(高円寺民お馴染みの高野青果で8個入り198円也)

 hideさんのギター論(練習における挫折やリズムの話)、パンク論に歌詞論(クラッシュとかブルーハーツの話)など、どの話もマヂ面白えので誰かと語り明かしたいが、当記事でそれをやると話が四分五裂(しぶんごれつ)して収拾がつかなくなるから一旦置いといて、今回の「レモネードアイスクリーッマ」の話をしましょう。

 15、6歳で初めて聴いたそのナンバーは、ミーと同じ“グラム歌謡”の匂いがしたのである。初めてなのに、前にもあった気がしたのである。hideさんは当初「1996年のヴェルヴェット・アンダーグラウンドの新曲」ないし「昭和歌謡のデュエットソング」をテーマに作曲したと仰られていたので、なるほど合点です。ライヴだと女装したチロリンさんとデュエットで演っておられましたね(いとグラム歌謡で候)。


 そんな完璧なグラム歌謡ナンバーへ真心込めて、原曲の魂を受け継ぎながら天上天下唯我独尊、私なりに演らせて頂きました。

 まずオープニングのメルヘンなオーケストラですが、私の手弾きシンセ、シンセ、シンセを重ね重ねに重ねまくって、結構忠実にカバーできたと自負しております。キラキラした遊園地のメリーゴーランドや、コーヒーカップがくるくると回る光景、そんな様なものが貴方にも見えたならば幸いで御座居ます。

 次に打ち込みのドラムはhideさんとか布袋さんをイメージして、モジュレーションかけまくりの“ポヨンポヨン”な音にしました。超具体的に言えば、Xの「セレブレーション」とかBOOWYの「ワーキングマン」のイントロのバスドラのあの感じ。

 そしてギターに関しては、私が歌いながら弾いているイントロとアウトロのフレーズにはフランジャーやコーラス等の空間系エフェクトを強烈に掛けて、それ以外のリズムギターはほぼクリーントーンのままチャカチャカとファンキーに演奏いたしました。跳ねるリズムで歯切れ良くカバーしたかった為、原曲の様にワウを使う事はしませんでした。

 最後にボーカルですが、こちらは原曲よりエフェクト弱めで、はっきりと言葉が聴こえる様にレコーディング・ミックスいたしました。恒例、ルースターズの大江方式で、前半は原詞、後半は日本語訳詞となっております。


「LEMONed I Scream」
作詞・作曲:hide
日本語詞:Nori MBBM

One day, I was walkin' down the streets
Looking for anything, Any surprise
Feel like a treasure game on a rainy day

Then it happened suddenly, I saw, I saw
And there it was fallin' down under my feet

Then, You know, It had something spiney head,
And I was gonna touch it
Then I got a pain,
My fingers painted in blood,
but I feel so fine

Nobody could find out, but I knew, I saw
I don'care if nobody can love it, oh yeah
Because ah hahahaha

ah… I've got a feelin' in my hand
It's a lemon lemon lemoned - I scream!

とある日、散歩をしてたの
イカしたミュージック聴きながら

そしたら突然、アヒャ、アヒャヒャ
と聴こえてきて
ええねん、ええねん
いこうぜ、ああん

ああ、ご馳走だ
スウィート・ポイズン・ケーキ
喰うて即ハイ的な
早よ早よ

嗚呼、性別年齢不詳ソング
It's a lemon, lemon, lemon & I scream

ああ、心から壊れたマシーン
でも大好き、大好き

嗚呼、なんて不適合者
It's a lemon, lemon, lemoned I scream! yeah

It's a lemon, lemon, lemoned I scream! yeah

It's a lemon, lemon, lemoned I scream! yeah


※Lemon:ミカン科の常緑低木、その果実のこと。
(俗語で)欠陥品、不快なもの。



メリケンのサブカルを敷き詰めた様な部屋にてMV撮影す

 今回はストリートファッションを気取って、罵詈雑言が列挙された黒のトレーナーにスキニーパンツ、昨年のドールズのカバーの時も履いた厚底のラバーソールを(このラバーソールのブランド名に“レモン”という単語が入っていたので)。後はオーテクのレモンイエローなヘッドホンを首にぶらん、と。


15年以上前に通った塾も今は誰かの一軒家
(高円寺から1時間半かけて一目見に)

 レモンが私に連れて来てくれるのは──レモンの飴を舐めながら勉強していた学習塾の小さな教室の湿った匂い、参考書の焼けた余白と目に痛い文字列の黒、履き古されて色褪せてほつれたスリッパ、立ち上がる度にミシッと軋む床、部屋の隅で必死に唸る暖房ヒーターに、尊敬する石川先生の低い声と咳払い──十代の断片達。

 二十代であれば、カクテル用レモンを仕込むライヴハウスの薄暗いキッチンの中、或いは付き添いで通った病院近くの喫茶店の低いテーブルとレモンティーのグラスの汗。

 同じ柑橘類でもミカンの匂いならまた別に、実家やら友達の家やら給食やら職場での記憶を引き連れて来る──そういえば芥川の短編「蜜柑」の冒頭は、hideさんの生まれ育った横須賀から始まるね──匂いとノスタルジーの話。

 貴方だって石鹸が香れば、学校の蛇口にぶら下がるネットがそれに食い込む様や、校庭にサッカーボールが擦れる音、野球部とかバスケ部の奴等の下卑た笑い声を思い出したりするであろう。

 私の場合なら実家の洗面所で、手を洗う直前まで作っていたプラモデルのディテールや、組み立て途中のパーツの形状、掛けられた手拭きタオルの柄や大きさを思い出したりするのである。

 外へ出れば近所から煮物の匂いがして、狭い裏路地に続く生け垣の高さや、夕暮れの太陽と雲の分布の仕方に、夜に成りかけた橙と紫のマーブル模様の空を思い出したりもする。

 嗅覚とノスタルジーにはキリがない。切りがなくて、意識は全て繋がっていて、結局、三つ子の魂百までと為る。


如何なる時もグラム期のボウイ様がミーの背後に

 勿論、目にだって耳にだって口にだって、手足にも沢山あるけれど、私は鼻──またぞろ芥川──が人よりデカいからか、そこが一番の記憶装置となっている様である。

 このデカい鼻……まあ目も耳も口も手足もデカいんだが、それらを生かして、千差万別の記憶を次々と手繰り寄せ、これからも芸術して行く所存で御座居ます。


 とりあえず30本できました、どうぞ宜しく!!!


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