2024年1月13日土曜日

SABRINA IN HEAVEN


悼辞「89 eighty nine」

2024/1/13(Sat) Nori MBBM

吐くぞ?隠すな!まだあんだろ?もう無いよ!声がガラガラだ?見ろ!もう出ない?弾くぞ!だから弾くぞ?こうやって!

 がんばれ、負けるな、俺達は仲間だ、友達だ青春だ、友情だ絆だ……白々しいフレーズが音楽番組で繰り返され、翌日の学校で野球部やバスケ部の奴等がそんな歌を口ずさむと、全ての気力を削がれてしまうみたく、好きなはずの音楽まで嫌いになってしまいそうで、だから“スモーキン・ビリー”が必要だった。

 中学の時の英語の先公は──こいつは俺を嫌っていたし、俺もこいつが嫌いだった──村上龍の「69 sixty nine」が映画化されるというので、大好きな原作が無茶苦茶に改変されないか心配だよね、と漏らした(気色悪い笑みを浮かべながら)。心配すんな、原作から既に滅茶苦茶ぢゃねえか、何をそんな有り難がってんだ。第一、俺が読書でいちばん萎えるのは、作者の詰まらん意図が見える時なんだ、読者如きに見透かされやがって。ありゃ何だ、フォントサイズを処々、恣意的に、白々しくも変えやがって。誰かに傍線を引かれた参考書を読んでいるみたく、こう読んでくださいねって、もう読む気も失せたわ。白々しいのは野球部の奴等が口ずさむ歌だけにしてくれ、とこの英語教師は野球部の顧問でもあった、ギルティ。それと確か、汗だらだら流したり、汚い描写が沢山あるから、今の時代ぢゃ“きもーい”とか云われて受け入れられないだろうねえ、とか抜かしていたけど、全然きもくなかったわ──sixty nine。だから先生ぢゃなく先公なんだよアンタ、中学生なめんな、15歳馬鹿にすんな──eighty nine。しかし村上龍は「限りなく透明に近いブルー」しか知らなかったが、ありゃミッシェルの“リリィ”の元ネタなんだってね?するとチバも読んでたんかな、村上龍。

 1989年にぬるりと始まった平成は、昭和の残り香を時たま感じさせながら、そうして無意に過ぎ去っていった。彼(か)の三十年間で最大の収穫は、イエモンとミッシェルだった。こりゃ平成、というより90年代が生んだ至上のロックンロールに違いなかった!!そのミッシェルも解散しちまって、アベも亡くなり、ロッソは骨太なロックで大好きだったけどニルヴァーナよろしくアルバム三枚だけで終わったし、ならばバースデーは延々と続いてゆくものだと思っていたのに。

見つけたぞ、
何を?
永遠を、
それは太陽に溶ける海だ。
-アルチュール・ランボー

 彼が今どこに居るかなんて知らない。が、曲を再生すれば相変わらず、叫んでは吐いている──

太陽をつかんで
しまった男は
ライオンの付いた
プールで死んでた

He got the sun

暗闇の中に生きてきた
男は生まれ変われると
信じた

He got the sun

太陽をつかんで
しまった男は
太陽から手を
放したくなかった

He got the sun

彼の身体は引力を
超えて真珠のネックレスが
はじけた空へうかんで

He got the sun

アカプルコに向かっている
小型ジェットの中
パーティーを続けてた
彼女は気付かないまま

He got the sun

太陽をつかんで
しまった男は
どうしてもそこから
動けずに立ってた

He got the sun

最後に見た夢は二人の
子供に囲まれた自分

He got the sun

エルパソに咲く花も
ヤシの実を見てないと
泣いたりするんだろうね
僕はそう思う

He got the sun
He got the sun

太陽をつかんで
しまった男は
ライオンの付いた
プールで死んでた


 マフィア映画のワンシーンで、真っ白な豪邸の真っ青なプールで、真っ赤になって太陽を浴びながら死にゆく男を想像したもんだけど、そうか、もう天国を見てしまったのか、観てしまっていたのか、あの平成の真っ只中に、既に、ヘヴン/ノー・ヘヴンと、サブリナと。


2024年1月5日金曜日

「Nori MBBMのカバーMVシリーズ」まとめ5

皆様どうも、ノリ・エムビービーエムです。

 平成二十八(2016)年末に何気無く始めたこのシリーズ、気ままに更新してきましたが、遂に50作目を数える迄となりました。

 この記事では「Nori MBBMのカバーMVシリーズ」まとめ5と題しまして、MVの41~50作目をご紹介いたします。






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「Nori MBBMのカバーMVシリーズ」まとめ5


41.「Comanche」(1959, Link Wray cover)

 リンク・レイ、1959年の作品。ヘッドコーツが1992年にカバー(作曲:リンク・レイ&ミルト・グラント)。カバーMVは2022年9月にアップ


42.「レンヴェーグ・ワルツ –RENNWEG WALTZ–」(2007, くるり cover)

 くるり、2007年の作品(作詞・作曲:岸田繁)。カバーMVは2022年9月にアップ


43.「EIGHT BEATER」(1999, NUMBER GIRL cover)

 ナンバーガール、1999年の作品(作詞・作曲:向井秀徳)。カバーMVは2022年12月にアップ


44.「Rock and Roll part 4」(1972, Gary Glitter cover)

 ゲイリー・グリッター、1972年の作品(作詞・作曲:ゲイリー・グリッター&マイク・リーンダー、日本語詞:Nori MBBM)。カバーMVは2023年1月にアップ


45.「Breaking the Law」(1980, Judas Priest cover)

 ジューダス・プリースト、1980年の作品(作詞・作曲:グレン・ティプトン&ロブ・ハルフォード&K・K・ダウニング、日本語詞:Nori MBBM)。カバーMVは2023年3月にアップ


46.「鏡の中のピエロ」(1996, ROLLY cover)

 ローリー、1996年の作品(作詞・作曲:ROLLY)。カバーMVは2023年5月にアップ


47.「サーカス」(1978, 友川カズキ cover)

 友川カズキ、1978年の作品(作詞:中原中也、作曲:友川カズキ)。カバーMVは2023年5月にアップ


48.「Hello, Welcome to Bubbletown's Happy Zoo –Instant Show–」(1998, the pillows cover)

 ザ・ピロウズ、1998年の作品(作詞・作曲:山中さわお、日本語詞:Nori MBBM)。カバーMVは2023年7月にアップ


49.「土曜日の誘惑 –Roll Away the Stone–」(1973, Mott the Hoople cover)

 モット・ザ・フープル、1973年の作品(作詞・作曲:イアン・ハンター、日本語詞:Nori MBBM)。カバーMVは2023年9月にアップ


50.「Paranoid」(1970, Black Sabbath cover)

 ブラック・サバス、1970年の作品(作詞・作曲:ギーザー・バトラー&トニー・アイオミ&オジー・オズボーン&ビル・ワード、日本語詞:Nori MBBM)。カバーMVは2023年12月にアップ


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「君達を資料と呼び、私達を物語と呼べ」
by Nori MBBM

美味しい料理を再現したい訳でなし、或いはカロリーを意識して自己管理する為に食事などせぬ。何となく味わって居たい、とんでもなく幸せに。何となく食べて生きたい、とんでもなく仕合わせに。だから体重増減に四苦八苦、であるから試行錯誤で万物流転(ばんぶつるてん)。

 私は理論を知らない、何故に楽譜を読めない。あゝ知らない知らない、えゝ読めない読まない。日によってまちまちだ、間違えないより間違いない。コツは掴んだろうが、定量的ではない──距離・速さ・時間。前に成功したからって、これからも成功しない。そんな事どうでも良い、生きる事は試験でない。試練であろうが試されない、予(あらかじ)め定められない。だから予定調和の諸行無常、であるからライフハックがライフファック。

 半世紀前の出来の良いSF小説を読んでは、何だ単なる日常の噺(はなし)ぢゃないかと。この日常の我が滅茶苦茶をして、過去ぢゃそんなの当たり前だったと。

 逸(そ)れたリズムは我が生命線、適当な長さだけメロディーは続くよ。自ら言葉も紡(つむ)ぐよ、己が際限はないよ。

 特技なんだ、文学。得意なんだ、音楽。誰にも負けないよ、勝負にならないよ。彼にも触らせないよ、一触(いっしょく)が即発(そくはつ)ならないよ。冒頭に戻るよ、再現はないよ。

 私が読めない文学は、何年後かの私が読むのに取って置いてある。

 私が聴けない音楽は、私の演れない音楽で、何年後かの私が聴くのに、何本目かのカバーMVで演るのに、聢(しか)と取って置いてある。


 君の資料になれば良い、私の物語となれば良い。






2024年1月1日月曜日

令和六年“榑木之地”

昨年は大変お世話になりました
──land of the rising sun



 榑木之地



 血の繋がっていない人、血の繋がった人。小さい頃から私の知っている人、小さい頃から私を知っていた人、みんな大好きな人。

 昨年は何という一年であったか、悲しみを哀しむ暇も無けりゃ怒る相手も無い。人一人にとっての今生の別れが、こんな立て続けに続いて良いものか、独りをより極めろってか。

 人の最期を様々に見せられて、私は私の最後をまざまざと具体的に想像できる様になった。



 2024、Are you burning?


2023年12月31日日曜日

令和五年“松柏後凋”完了

ペストと生とのかけにおいて、およそ人間がかちうることのできたものは、それは知識と記憶であった。
-ベルナール・リウー

 感染症法におけるコロナの扱いは令和5年5月8日(月)以降、それ迄の“2類相当”から“5類感染症”へと分類される様になり、もう特別な措置──コロナウイルスを他の感染症と区別して取り扱う事──は必要無いのだと、専門機関での受診も隔離も不要なのだと。

 この丸三年、コロナと生の賭けにおいて(というより私と生の賭けにおいても)、知識と記憶、収穫はただのそれだけであった……ただのそれだけ?十分、充分。生きている間に我々が得られるもので、これ以外にこれ以上の何があるというのか!!

 私はただ一頭の牡牛であるのに、闘牛場に連れて行かれ、闘牛士が連れて来られ、明けても暮れてもそれ、繰り返し群衆は叫び猛(たけ)り怒り狂い、遂に腹を突き、破ってやった時に眼玉をも突き抉(えぐ)ってやった

 倒れ込んだ闘牛士の、ざまあみやがれ……待てよ、血で染まる前から真紅(しんく)に違いなかったナポレオンジャケット、私を散々煽(あお)り立てたマントと同じ色の、それを着た屍(しかばね)がまた、何時(いつ)の日かの手前、戦いを挑んだのも挑まれたのも仕組んだのも俺だ。その心は今日の日めくりバーニンで呟(つぶや)く呟きツイートツイッターした。

【MBBMの日めくりバーニン七条】肉体に賭けた強靭な精神力を、精神にまた還元させて、精神にだけ還流される肉体は形を崩し、あはれ!滑稽と結婚するのだ!戦争した事もないのが軍服に身を包むのだ!不用な装備がその気にさせるのだ!生きて死ぬ緊迫や壮絶を再現するのだ!死なねえからだ!ドグマッ

 そもそも闘牛場へと自ら出向いたのでした。だって楽しそうぢゃありませんか?昔からユーモアが尽きなくて、それ所か止め処(ど)無く溢れ返り、溺れ、死にそうにならんと生きられなくて困って升(ます)。

また認識の聖者になることはできないにしても、せめて君たちは認識の戦士であれ。戦士はそういう聖者たちの伴侶(はんりょ)であり、先触れである。
 兵卒は多い。だがわたしの見たいのは戦士たちだ。かれらが着ているものは、制服、すなわち「単一型」と呼ばれている。その単一型の制服につつまれている者が、単一型でなければいいが。
 君たちの目は、つねに敵を──君たちの敵を、さがし求めていなければならぬ。君たちのうちの何人かは、ひと目見ての憎しみということを経験したことがあるだろう。
-ツァラトゥストラ

 一目惚れ以上に経験あるね、馬鹿が、最悪の一目惚れは──こいつ、相容れぬ、という一目見ての憎しみは。

 なあんだ、この世の敵は全て我が願望なんだ。今年もまた一つ己が叶えてやった、用済みの四字熟語がまた一つ増えた──“Song Bo Hou Diao”。これぞ殺生ワード頭蓋骨、そのアイ・キル・ユー!!



 今年も益々有難う、令和五年“松柏後凋”完了。


2023年12月29日金曜日

鉄人・狂人

超人鉄人!!カバーMVが五十本、こうして綴る胸の内が五十編、どうして五十回も吐露(とろ)したのだ己が胸中──その心は。

「いまも読まれ、将来も読まれる」
-アルトゥール・ショーペンハウアー

 やりたいこと、やらねばならぬこと、やめねばならぬこととやめたいこと。以上が渦巻くこの師走(しわす)に、綴る胸の内が五十編、カバーMVが五十本。



 やりたいこと、ハードなロックとヘヴィメタル、巷で噂のHR/HM。十代から変わらぬ、いや、生まれた時から兆(きざ)しはあった。誰よりも重たかった、五月一日の夜に、日赤(にっせき)病院の二階で。予定日の平成元年五月八日より一週間早く、身長五十一センチの、体重四千五グラムで産まれた。


身長百七十九センチ、体重八十二キロ
(令和五年十二月現在)

 やらねばならぬこと、カバーMVが五十本、令和が五年の十二月に。当初オジーおぢさんの、変なおぢさんのオズボーンが誕生日の十二月頭に、と考えていた処。訃報(ふほう)、訃報、何という無謀。ならば来年に持ち越そう、いや無理だろうが、この鉄人狂人!!


今の気分にぴったりな、ってか今年一年を象徴するよな“深淵の季節T(スレイヤー)”を着用

 そうです私が、鉄人もといアイアンマン、狂人ないしパラノイドです(さもKen SHIMURA風に)。さもNori MBBM風の、さあれどもNORIの逆様(さかさま)、IRON MAN様。完璧なアイロニー(IRONY)、皮肉をして皮肉にされる牡牛座、挽(ひ)き肉にされた皮肉屋さんがPARANOID。七年前の平成二十八年三月、MBBMというバンドの自主製作盤にて、一度カバーしているのだ“狂人”は。曲構成も詩も手前勝手に、MBBMバーニン勝手に改変して演りましたが、今回は詩も構成も原曲に忠実に。ドグマッと言いつつもNori MBBMの自分勝手、ヴァース後の“オーイエー”だ奇声だギターソロだドラムのフィルだフレーズだって、俺ら印(じるし)の手前勝手(やっぱ原曲無視で)。御覧になってさあ、御託(ごたく)並べましたは、御目に掛けませう。


「Paranoid」
作詞・作曲:ギーザー・バトラー&トニー・アイオミ&オジー・オズボーン&ビル・ワード

Finished with my woman
'Cause she couldn't help me with my mind
People think I'm insane
Because I am frowning all the time

All day long I think of things
But nothing seems to satisfy
Think I'll lose my mind
If I don't find something to pacify

Can you help me
Occupy my brain?
Oh yeah

I need someone to show me
The things in life that I can't find
I can't see the things that make true happiness
I must be blind

Make a joke and I will sigh
And you will laugh and I will cry
Happiness I cannot feel
And love to me is so unreal

And so as you hear these words
Telling you now of my state
I tell you to enjoy life
I wish I could but it's too late


日本語詞:Nori MBBM

あの娘とは終わったよ
もう互いに知らない
皆々知らなかった
狂人変人好かない

日もすがら夜もすがら
明けても暮れても足りない
上げても呉れても
精神神聖知らない

聞こえますか
頭ん中?
Oh yeah

見たいだけ魅せてくれよ
魅せた処で見えない
観られた物ぢゃない
読める訳でもない

戯(ざ)れ言に溜め息で
嘲(あざけ)りが切ない
幸福不感症
愛着形成不可能

後そうだ最期に
一つだけ言いたい
人生楽しめよ
俺が楽しめない



 ちなみに人生de初、スーパーライトゲージちゅうのを張りましたda、ギターの弦の話death(壱)。いつも人並それ以上にヘヴィゲージ、だって音楽も文学もヘヴィでナンボ、全く不器用な奴で御座ゑました。白状すりゃチョーキングやビブラートなぞ苦手でさぁ、それがあんたぁ、目から鱗ぉdeath(弐)。こんなに柔(やわ)くてぐにゃんぐにゃん、それ故、チューニング狂いやすしきよしdeath(参)。一長一短、玉に瑕(きず)、諸刃の剣(つるぎ)って奴death(死)。


Merry Christmas, Mr. Crowley (not Lawrence)

 やめねばならぬこととやめたいこと、神の信仰、神は死んだってこと。現に音楽と文学、それにも云えること、それでも手前やめないか。令和五年に生命(いのち)散って、皆様目一杯精一杯生きた、神様も無しに無様に生きてみせた。さながらニーチィズム、さもなくばドグマティズム、この人を見よ。


Ecce homo, Nori MBBM (not Nietzsche)

「いまも読まれず、将来も読まれず」
-フリードリヒ・ニーチェ

 カバーMVが五十本、こうして綴る胸の内が五十編、どうして五十回も吐露したのだ己が胸中──その心は。


 みんな読めないのであるから、みんな恥ずかしくなんかないのだよ、さあ堂々巡りだ堂々と。永劫回帰!!




2023年12月6日水曜日

九界


悼辞「人生は一曲の魔王にも若(し)かない」

2023/12/6(Wed) Nori MBBM

 百二十四──La Fin de la Journèe──やっと眠りに就(つ)ける。横になる。これが永遠の眠りなら、きっと重力からも解放される。6も9も同じこと。むしろ逆となる。ある日突然。魔王がやって来て。

 百二十三──La Mort des Artistes──こゝでは太陽の役割を月が果たす。死後、新しい生が始まるといふ、逆説の世界で。自らの偶像を見つけられなかった彫刻家達、迷宮の永住権を与へられた芸術家達。陰気が陽気に立ち振る舞ふ世界で。

 百二十二──La Mort des Pauvres──生きる事が手段で、死ぬ事が目的だった。そんな事ない?もう思ふ存分、食べたり、眠ったり、坐(すわ)ったりしなさいな。今や生きる事が目的で、死ぬ事が手段なのだから。

 百二十一──La Mort des Amants──薔薇色の太陽の位置に、月が居座ると?神秘的な青の月に、太陽が入り込むと?この世界の空の色が決定される。摩訶(まか)不思議な色。火加減の推移(すいゝ)、焰(ほのお)のグラデヱションみたく。ゆら/\と、そわ/\と。つい、見とれてしまふ。君と、僕と。

 百二十──Les Litanies de Satan──悪魔/\と罵(のゝし)られ、違ふ/\と訴へ続けた!勝訴の日だよ、サタン様!何編(なんべん)も泥を啜(すゝ)り、何編でも立ち上がった、その甲斐(かひ)があった!貴方はこの国の王、とどのつまり、魔王となられたのだ!

 百十六──Un Voyage à Cythère──僕の目をただ二つの穴にしちまった奴ら、食ひ千切(ちぎ)って喰ひ破って、僕を去勢した処刑人ども。さらには、御馳走の順番待ちをする、四つ足の獣の群れ。その真ん中に居た、手下に囲まれた執行官のお前、覚えてゐろよ。

 百十五──La Béatrice──僕と愛し合ったあの女は、その愛情を情欲に変へ、卑猥(ひわい)とか猥褻(わいせつ)に代へ、遠くから僕を嘲笑するばかりか、懲罰(ちょうばつ)を与へるみたく……僕の憎む、僕を憎む……奴らに愛想まで振り撒いた。いやらしい、いやしい、いかがわしい、太陽がめら/\と、よろめいてゐた。

 百十四──Allégorie──夜を知らなかったから、こゝへ来たのだらう?死を知らなかったから!それがひと度(たび)、その身体が知ってしまへば。なあんだ、こんなもん?地獄より煉獄(れんごく)よりも残酷な顔!欲望が拒(こば)めない、恍惚とした美しい顔。だのにまあ、何と無垢(むく)で可憐な顔。

 百十──Une Martyre──怠惰な二人はまるで死体、しかしこの世界ぢゃ、生きてゐる事の最上級。ねゑ窓を開けて、ほら空気を入れ換へないと、そんな気も起こらない。むせかへる様な、淫(みだ)らが充溢(じゅういつ)する部屋で。ゾッとするよな、真っ赤な部屋で。

 百九──La Destruction──腕枕にして、寝顔を眺める。満足だ。めったに見られないからな。そんな感慨(かんがい)が、僕をあの世へとイカせる。不可逆の世界へと誘(いざな)ふ。6と9がぐちゃ/\に絡み合ひ、その数を識別できなくなった褥(しとね)で。

 百三──Le Crépuscule du Matin──そろ/\僕は疲れてきた、かう書く事を。彼女が僕を、さう愛したのと同じ様に。

 百二──Rêve parisien──むせかへる様な真っ赤な部屋は、悲惨すぎた。ただ、独りには。風前の灯(ともしび)、じき煙(けむ)った世界で。太陽は彼方へと昇り、曇天の正午を迎へる。

 九十五──Le Crépuscule du Soir─フラれたのか?夕刻が訪問してくる。空が暮れゆくより、空が呑まれゆくまで。何に?僕の真っ赤な部屋に。急に世界が閉ざされた、僕の部屋みたく。だから夕刻は僕を誘ひ、一緒にお出かけしようって魂胆(こんたん)らしい。え、了解した。

 九十三──A une Passante──運命のイタズラだなんて、使ひ古された一言で済ませちまうから、誤魔化される。ふと街で出逢った君、つと僕は騙される。愛すも愛さぬも、これきりとなる。互ひに、心は知れてゐるのに。

 九十──Les sept Vieillards──傷付くのに理由がいるんだって?嘘をおっしゃい!現に何事も無いのに重傷を負った奴が居る。“重症”の間違ひだ?だとしたら、その病名をおっしゃい!

 八十七──Le Soleil──これが病名です。あなた誇大妄想狂(メガロメヰニア)ですよ。街中を歩いてゐるふとした瞬間でも、全て物語みたく結び付けるその悪い癖ですね。石に躓(つまず)いたり女とすれ違ったりする事に、一体何の意味があると云ふのです?

 八十──Le Goût du Néant──医者はさう云った。一点の曇りも無い顔で。この精神をさう説き伏せた。何時(いつ)からか恋の味もしなくなった。幾ら濃い味にしたって、それは味覚が麻痺してしまったから。感覚が参(まい)ってしまったから。精神が

 七十七──Spleen──ピヱロ、道化師、お前ら面白くない。一度だけ腹を抱へて笑ったけど、今やかへって腹立たしいくらい。全然おもんない。セックス、恋人、気持ち良くない。全部しやうもない。ドクター、博士、何もかも治せない直せない。きっとこの血は赤くない。青か緑か紫か何か。どうせ人間なんてもんぢゃない。精神が

 七十六──Spleen──真夜中過ぎ、友人だった夕刻も寄り付かなくなり、最たる理解者だった月も射さない真っ暗な部屋で、ガサゴソ/\、漁ってゐる。出てくるわ/\、想ひ出の数々、処々、虫に喰はれて穴が開いてゐる。さうか、お前にはまだ味がするか。どうだ、この想ひ出は味わい深いか?精神が

 七十二──Le Mort joyeux──幾らでも召し上がれ。陽気な死人なんてのは珍しいだらう。この腐敗を残骸を、或いはまだ/\僕、死ねるのか、試しておくれ。さあ、幾らでも召し上がって。さあ

 六十五──Tristesses de la Lune──月は輝きを増してゆく……太陽なんかが決して目にする事のない、かうした悲劇を密かな楽しみとして……いつしか僕は骨だけとなった。

 六十──Franciscæ meæ Laudes──骨に、肉を着けてください。肉に、味を付けてください。味に、愛を漬けてください。愛に、骨を

 五十八──Chanson d'Après-Midi──骨、肉、味、わい、愛、骨、無い、ない。以上、八つ裂きにされた心と身体。弄(もてあそ)ばれ、踏みつけられた才能と宿命。ロクでもない色恋の、白く伸びた手足によって。何度も/\イカされる。

 四十八──Le Flacon──神様を盲信できるのは、奴が目に見えないから。恋人を盲信したのは?彼女の、目に見えないものにやられたから。だって、目の前に居る時から既に想ひ出みたいだった。だから、触れて触って確かめたかった。形の無い、懐かしい感じのする、香りの訳を。

 三十八──Un Fantôme──その四──Le Portrait──子供の頃、無性に絵を描いたは、大人にしてみれば、無象(むぞう)を有象(うぞう)にしたかったは、それ全て時間への抗(あらが)ひ、あの無数の絵はいま何処(どこ)に?無象の絵はいま何処(いずこ)?やはり時間に敗(ま)けたのか?休む間もなく、さう、間もなく、時は容赦なく、芸術ばかりか生命まで、あの絵のヰンクが何時か褪(あ)せたよに、あの有象が姿を眩(くら)ませたよに、この寿命まで頂戴しに来る。僕はまた絵を描くよに、かう文章で、なおも記憶を残さうと、誰かの記憶に遺さうと、抗ふ。

 三十八──Un Fantôme──その二──Le Parfum──君は想ひ出、形の無い、懐かしい、良い匂ひ、抗ひがたい、色と恋、好きな匂ひ、花々、君の香り、色恋、花の一輪、君が香り、まぼろし。

 二十一──Hymne à la Beauté──彼は彼を蔑(ないがし)ろにする彼女への恋に抗へない。幻。虫は虫を葬(ほうむ)らんとする蛍光の灯に逆らへない。月。幻と月の共通点は?手が届かないこと?夜にだけ現れること?違ふ、違ふね。美。正解。

 十七──La Beauté──こんな僕にも誇れるものがある、美しいと思へる処が。それは僕の大切な場所でありながら、僕の手がべた/\と触れられない箇所(かしょ)。あの女を見つめた二つのもの、あの女を映した鏡みたいなもの。眼。正解。

 十一──Le Guignon──だからといって、それを取り出す事は出来ない。いや、取り出してしまったら、見る事も叶わない……思ふ存分、触る事だって。せいぜいが、鏡を用意する事だ。誇るべき唯一の長所だのに……まあ何と理不尽な!

 五──Sans Titre──万が一、美醜が転覆されでもしたら?逆説の説の逆、鏡の世界の左右の右(ゆう)さ!愛した美の全て、捨て去る事が出来るかしら?誇るべき唯一の長所を!或いは有象無象、数限りない短所を、面白がれるかしらん?……なあ、惨(みじ)めな肉体よ!

 一──Bénédiction──怯(おび)えられ、脅(おびや)かされて、驚かれ、追ひ詰められて、犯されて、怒られながらも、負はされて、これら全て、狂った太陽と、惡の華と、殺しの調べに……この世界なりの、祝福だったので御座居ます!!

 〇──Au Lecteur──うらみ、つらみ、ねたみ、そねみ、これで元が取れた。泥んこの道、泣いた、涙で洗ひ流した、つもりの汚れ、これだけたっぷり告白すれば。きっと罪悪からも解放される。六界も九界も同じこと。読者も作者も君も僕も。ある日突然。魔王が居なくなって。はっと眼が醒(さ)めた。