2023年3月30日木曜日

ジャパニヰズ・スティヰル(とマッシュの鉄板)

グラムにしろ歌謡曲にしろメタルにしろ、好きな音楽のジャンルというより既に人格の一部であった──音楽以前の話、前世辺りが起源の話──この愛着と諧謔(かいぎゃく)がグラムを、懐古と郷愁が歌謡曲を、仁義と父性がメタルを、それぞれ引き合わせた、互いに惹き付けた、やたら聴かせた、口を利かせた、幅を効かせた……“グラム歌謡メタル野郎”まで行き着かせた。

 短い青春が強靭な音楽と出逢うのに長い成長と友達と恋人を省略し、最高のリフと出逢うのに最速のリズムを刻まれたかった。少年が恋い焦がれた強靭な音楽、そのヘヴィメタルとは何ぞや?英国はバーミンガムが生んだ偉大なるバンドを二つばかし聴けば解るさ──ヘヴィを知るにはブラック・サバスを、メタルを知るにはジューダス・プリーストを。



 したがってジューダスである(今年中にサバスも必ず演る)。一般的に云われるところでは、伝統のブリティッシュハードロックから出発し、6枚目のアルバム「ブリティッシュ・スティール(1980)」でヘヴィメタル宣言をし、12枚目の「ペインキラー(90)」でブチギレモードへと突入、まさにこれからという時にフロントマンのロブ・ハルフォードが脱退……という流れで間違っていないと思うが、ファーストはまあ確かに哀愁のツインギターによるブリティッシュハードロックだとして、しかしセカンドからもう非常に(非情な)メタルである。それは哀愁の泣きでなし、狂気に鳴き叫ぶよなイカれたイントロからの、ザクザクとブリッジミュートで刻むギターの冷徹さ──“切り裂きジャック”、最高にメタルぢゃありませんか?


十年前に買った革ジャン一張羅、ショットのヴィンテージ“Perfecto”
(生地は傷だらけファスナー閉まらずポッケにゃ穴あきボタン錆び錆び)

 俺はベスト盤から入った口だけど、ジューダスというのはストイックなメタルバンドであるにも関わらず、急な路線変更を繰り返すバンドでもあるから、アルバムを一枚一枚ちゃんと追っていくと戸惑うんだよね(10枚目の「ターボ(86)」とかテクノ入ってるし)。上述した6枚目や12枚目もそうだけど、長いキャリアの中で何回も再デビューしている様な感じ?キャリアを通じて全作品好き、というジューダスマニアにはお目に掛かれた事がない。個人的には、80年代初頭のゴリッゴリッにパワーメタルしちゃってる屈強なジューダスが最高に胸アツであります(8枚目の「復讐の叫び(82)」なんて、我らが日本のラウドネスの3rd「魔界典章(83)」を聴いてる時みたく、このジャパメタ狂いの拳を我武者羅に振り上げさせてくれるよね)。

 前段でうっかり“ベスト盤から入った口だ”と言ったけど、ジューダスとの出逢いをよくよく思い返してみたら、2001年の年末にやっていたタモリ倶楽部の「空耳アワー傑作選」って特番だったわ!!まだ洋楽はおろかロックすらも聴いていない、J-POPしか知らん12歳の頃の話。空耳の傑作選に取り上げられていたのは初期の代表曲“シナー(罪業人)”で、♪母さんが言う こういうパーマは変だと 死のう~ってソラミミ界隈で伝説となったヤツ、あの再現ドラマみたいなチープな映像と相まって大爆笑した記憶があるけど、それがジューダスとのファーストコンタクト(今は空耳なしで素直に聴けるよ、ここまで来るのに十数年かかったけど、笑)。メタルって様式美だから、キメの一番盛り上がるところが空耳フレーズだったりすると他の音楽ジャンルより破壊力が凄いんよな……メタリカとか異常に空耳の傑作が多いし


己がジャパニヰズ・スティヰルは“サンダー・イン・ジ・イースT(ラウドネス)”と迷ったが、今回は“戦術T(アイアンメイデン)”で許してやろう

 という訳で(どういう訳で)、俺の初めての洋楽体験は15歳で買ったピストルズかT.RexのCDレコードだと思っていたけど、12歳でこういうパーマは変だと死のうのジューダスでしたのメタル野郎!!これが俺らのジャパニヰズ・スティヰル!!!!


「Breaking the Law」
作詞・作曲:グレン・ティプトン&ロブ・ハルフォード&K・K・ダウニング

There I was completely wasting, out of work and down
All inside it's so frustrating as I drift from town to town

Feel as though nobody cares if I live or die
So I might as well begin to put some action in my life

Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law

So much for the golden future, I can't even start
I've had every promise broken, there's anger in my heart

You don't know what it's like, you don't have a clue
If you did you'd find yourselves doing the same thing too

Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law

You don't know what it's like

Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law

Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law


日本語詞:Nori MBBM

全き無駄遣い、一世一代
苛立ち止め処無き市井無頼

伸しても伸びても構われない
構って欲しけりゃやるしかない

Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law

沢山だ黄金時代、俺は降りた
大体が気分次第、俺は滾った

貴様にゃ分からねえ、分かる筈が無え
分かるとしたらばこれをやれ

Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law

貴様にゃ分からねえ

Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law

Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law
Breaking the law, breaking the law



 手前のカバーMV史上、最も上手く訳せたのではないかと自負しております。詩の伝えようとする意味だけでなく、韻や語感も含めて全て。トラックに関しては、ブリッジで勝手にブレイクポイントを作るなど独自のアレンジを施しましたが、その他は原曲に忠実に、いつも通りシンプルなエイトビートとヘビィメタルなディストーションギターで、そう、こういうのでいいんだよ、こういうので


※「孤独のグルメ」12巻より

 あゝ高円寺マッシュなぜに閉店したのだ。死ぬほど頼んだ俺のお気にの“C(630円)”、オレンジ色の甘辛ソースのスパイシーな香りが食欲をそそるダブルメキシカンハンバーグ、その場で殻を割られてジュージュー焼かれた目玉焼きに平皿のライス、業務用を解凍したチープな感じがまた良いミックスベジタブルに鉄板の上で炒められて少しカリッとなったソース無しパスタ、そして何故か洋食の付け合わせに卵とワカメの入った熱々のお味噌汁、世界一美味しかったなあ“C(630円)”……店内に流れるラジオのMCの吉田照美のしょーもない下ネタ(←マジでおもんない)が妙にツボったらしく、突然後ろ向いて肩を震わせていたマスターにつられて俺もよく吹いたなあ……いや、高円寺にはまだ、姉妹店のニューバーグがあるぢゃないか!!


行こう、MBBM、行こう
※現在“C”は780円らしい

 そして件のタモリ倶楽部も今月いっぱいで、その40年の歴史にとうとう幕を下ろすらしい……ソラミミストの安斎さんは今や、空耳でメタルを聴き過ぎたせいか、スレイヤーのトム・アラヤと見紛う程である。


 ドグマッ