もうこの本の読者ではないのかもな、と思い始めたのが十年前。もうこの本の読者ではないのだな、と想い至ったのが数年前。だからもう買っていないロキノン、そのJAPAN。先月出た五月号にイエモンの最新インタビューが載っている、という訳で近所の図書館に行った。ライヴ前に。
2016年の再集結は、再結成というより新しいバンドをまた一つ組んだ感じ、という話の中でアニーさんの云われた「だから『9999』もちょっと、インディーズ的な──すごいでっかいインディーズなんですけど(笑)、そういう感覚はありましたね」という言葉が、なるほどそういう事か!と今のイエモンを理解した想いで、膝(ひざ)を打った。とすると次の10枚目が(二度目の)メジャーデビュー作か、了解した。図書館の破れた椅子で。
それから喉頭癌(こうとうがん)の放射線治療により、半年声が出せない状況下での楽曲制作、「シンプルにならざるをえなかったっていう。ほとんど口笛で作ってたので(笑)」という吉井さんの告白は、今のイエモンの楽曲を“円熟した洗練の極み”とか短絡的に判断してしまいがちな、手前の考えを改めさせた。「今までは客観的な死を歌ってたけど、今は主観的な死を歌うように聞こえてるんですよね、僕はね。」とはアニーさん。東京ドームへ向かった。
SUPER指定席で観てきたぞ(何とお土産付きだ)。今回の東京ドームは“(バンド史上)過去最多動員らしい”と吉井さんがMCで仰っていたが、そんなライヴをスタンド席でなしアリーナの良い席で観られたのだから、それだけで望外(ぼうがい)の喜びと言うべきである。が、(二度目の)復活ライヴという事で、コアなアルバム曲はほぼ演らず、シングル曲やアルバムリード曲のオンパレードであった。いや、演って欲しかった曲は数あれど、超充実した楽しいライヴだった。“人生の終わり”、良かったねえ
演奏はもちろんだけど──ヒーセおやびん興奮しすぎて一睡もせずに今日の本番を迎えたそう──吉井さんの歌、凄まじかった。数曲歌ってやはり声が掠(かす)れてしまい、時折裏返る所もあったけど、終盤ではまたどこまでも伸びる様な声、裏声、叫び、がなり、圧巻だった。喉頭癌の治療の為に何度も手術を重ね、誰もやった事のない様な歌のリハビリをして、東京ドームで3時間近いライヴを演る……いやはやまったくとんでもない。
それとこれは縁起でもないが、吉井さんの声がこれからどんな状態になろうと、“Welcome to my Doghouse”だけは格好良く歌ってくれるんだろうな、という事は分かった。あれは、そういう歌だ。良い時も悪い時も、たといガラガラに声が掠れても。
生演奏ではなかったけれども、VTRで流れた新曲“復活の日”、これは俺達の為の、日本語による、令和における“すべての若き野郎ども”だね。ちゃんと大事な所はグラムロックしてくれるから、つくづくこのバンドを好きで居て良かったと思う。信じていて良かったと。
暁に果てるまで、で、パーン!!東京ドームに紙吹雪がキラキラと、金銀テープがひらひらと、身長を活かして空中キャッチしましたわよ……Asian boy、Asian boy、もしかして君も、Asian boy?
ィエッッサー!!