2022年11月30日水曜日

平成総体(上)

ツァリンツァリン

 夜空にちょうど穴を開けた様な月が、或いは闇夜に鏡を嵌(は)め込んだ様に、甚だ不自然の体(てい)であった。何も写さない鏡みたいで、即ち全て取り込んでしまったみたいで。

 天上め、人間め、修羅めが!!!

一日目の午後

 三日連続で人身事故に出会(でくわ)した。通勤で乗り換えの秋葉原駅に着く度、本日は電車が遅れまして云々(うんぬん)。本日“も”であるが、其(そ)れは駅員が誰よりも感じている事なので、一々口には出さない。斯(こ)うも人身事故が連日続くと何だか国全体、其ればかりか地球全体まで疑ってしまう。

 “まさか地球が自転しないまま公転して、此(こ)のまま二度と夜が明けないかもな、フィクションでは有り得る事だよ。だって作者とか読者が神様なんだから、此処(ここ)ぢゃ人に神の権限が与えられているんだから、不安で不安で仕様がねえや……”

 新高はスマートフォンをスーツのポケットから徐(おもむろ)に取り出し、読んでいる途中であった電子書籍のページを開いた。


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【地獄篇】巻頭付録
「時代二種類どちら様」

 以下に四つの時代区分を明示しておきます。これは拙著“六界記紀”その【地獄篇】である「役者二種類どちら様」を読む上で、作中に列挙した役者類型の四つのパターンと併せて認識して貰う事で、作品の理解の一助となる有益なものですので、別冊という形になりますが、巻頭付録とさせて頂きました。

 区分①:浮かれた時代、まさしく戦後、昭和、馬鹿で何にも考えず、何にでも口を出す、可能性だけの、馬鹿に楽しい時、どう楽しんで生きるか、それが彼等最大のテーマ。

 区分②:白けた時代、まさしく戦前、平成、馬鹿は何か考えろ、何か考えてから口にしろ、可能性の、馬鹿が待ったをかけられた時、どうやって生きるか、これが僕等最大のテーマ。

 区分③:挫かれた時代、まるで戦中、令和、馬鹿に考え抜いて、選(よ)りすぐり選(え)りすぐり実行する、実現可能性の、馬鹿が行動に移す時、どうやって死ぬか、あれが君等最大のテーマ。

 区分④:終わらされた時代、まるで終戦、平和、馬鹿は覚悟を決めて、唯一残された義務を遂に完了する、実現可能性だけの、馬鹿を卒業する時、どう苦しんで死ぬか、どれが我等最大のテーマ?

 Nori MBBM


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 毎年、国全体の自殺者数の発表に際し、「近年は増加傾向にあるので、早急に対策を取らなければならない」という旨の一文が申し訳程度に添えられているが、あれは一体何の積もりか。区役所からの様々な督促状を受け取る度に、こりゃあまた自殺者数増えるわ増えるわ、と思わず笑ってしまうからさ。逆に何で国は減ると思っているんだ──所得税、住民税、消費税、酒税、航空機燃料税、石油石炭税、自動車重量税、関税、自動車税(環境性能割・種別割)、軽自動車税(環境性能割・種別割)、狩猟税、鉱産税、入湯税、相続税・贈与税、登録免許税、印紙税、不動産取得税、固定資産税、特別土地保有税、都市計画税──逆に何で国は減らしてくれないんだ?此の際、“人身事故税”も追加したら良いんぢゃないか?貧乏人からだって“督促状印紙税”とか“督促状取得税”とか“督促状保有税”とかさ!もうかるぜ、おかみさんよ!

 ふと、今年一番死にかけた瞬間を思い出してみる。此れを毎年並べたら、どんどん更新されそうで、手前の死まで確定しそうで、せめて、今年一番嬉しかった瞬間を思い出した方が、などと柄にもなく思ってしまった。何だまだ生きたかったのかよ。如何(どう)したって人間あっという間に死ぬんだぞ。人生すぐだ……其れが如何して中々終わらない。

 秋葉原駅で来ない電車を待ちながら、はたまた人身事故のアナウンスを聞きながら、以上の如き思案、妄想を巡らし、新高は職場に体調不良の旨を伝え、今夜の勤務はおろか、もう二度と出社する事もなかった。そうして改札を出て、何となし神田方面へ歩いて行き、道すがら目に留まったレンタカー屋へと入ってしまったのであった。

二日目の午前

 幸運にも難を逃れた様だった。間一髪の処で、運転するレンタカーをぶつけずに済んだのだ。それは新高が慣れぬ道を走っている時だった。

 「あゝ助かった……助かったけど」
 「助かったけど?」
 「こんな処で信仰貯金を使いたくなかった」
 「信仰貯金?銀行貯金みたいに!」
 「こんな詰まらん事で、積み上げてきた信頼をだな」
 「新高君、“信頼”ならまだしも“信仰”は結局、金なのかね?」
 「金なのかね?って不信心者を見る様な目で誘導尋問やめてください」
 「しかしね、君には不誠実なものを感じますよ」
 「貴方の信仰は、人を評価できるほど高尚なもんですか?」
 「そんな事はないですが、少なくとも金に基づいたものでは無い」
 「はあ、お布施も、お賽銭も、正月の初詣も、私には大切な信仰の一つなのですが」
 「其れは否定しませんよ、ただ“信仰貯金”という言葉が、引っ掛かっただけで御座居ます」
 「数値化、可視化するのが、厭(いや)らしいというんでしょう?」
 「えゝ信仰は、試練であったとしても、試験ではないですから」
 「其の物云い嫌です、というより貴方が厭らしいと見なした私の見解に、案外近いですよ」
 「其れはそうです、新高君に寄り添って考えてみたのですから」
 「処で貴方、さっきから当然の如く話し掛けてくる貴様、一体誰です?此れ私の車ですよ、借り物ですがね、一体いつ乗り込んで来たんですか」
 「何時とは言わん迄も、何時も君が両手を合わせる其の、向かう側に居るものですよ……いや実を言うと神田辺りですよ」
 「信仰貯金、私は本当に使い切ったんだな……人間に見える形で現れるだなんて、もはや神様、いや貴様、目に見えて表せるなんて……今まで一体何を信じて来たんだろう、何でお願いしていたのだろう、馬鹿だ、間抜けだ、不仕合わせだ、全部自分に使えば良かったんだ……そしたらこんな車も運転しないで誰かに運転して貰えたし、さっき“信頼ならまだしも”とか云っていたけど、信頼も試練もまやかしだ、嘘が通じるのは其れが他人だからだ、神様、貴方が他人だからだ、人だからだ、嘘が通じないのは是(こ)れが自分だからだ、嘘を付けない対象は自分だけなんだ、自分だけで充分だったんだ、其れなのに、其れなのに!コミュニケーションの聖域に踏み込んで来るんぢゃない!お金を払えば特別な事を教えてあげますよ、いやいやウチは其処(そこ)んところ無償でやりますよ、なんてニュース速報はゴミ、全ネットニュースはゴミクズ、その上に成り立つ議論もまとめてゴミクズ箱、手前以外の神様気取りも含めて全て可燃ゴミクズ箱!会社も社会も全部いらねえんだ……もっとコミュニケーションは……とても尊いんだ」
 「……とても地獄(ぢごく)は一定(いちぢやう)すみかぞかし!弥陀の本願(ほんぐわん)まことにおはしまさば、釈尊(しやくそん)の説教、虚言(きよごん)なるべからず!仏説(ぶつせつ)まことにおはしまさば、善導(ぜんどう)の御釈(おんしやく)、虚言したまふべからず!善導の御釈まことならば、法然(ほふねん)のおほせそらごとならんや!法然のおほせまことならば、親鸞がまうすむね、またもてむなしかるべからずさふらふ歟(か)!」
 「何を急にブツブツと……地獄は我が住家であると定まって居ます!阿弥陀如来の本願が真実であるならば、釈尊(しゃくそん)の説かれた教えも虚言であるはずがありません!仏説が真実ならば、善導(ぜんどう)の御解釈も虚言を云っているはずはないでしょう!善導の御解釈が真実ならば、法然の仰(おっしゃ)った御言葉も虚言で有り得ましょうか!法然の仰った言葉が真実ならば、此の親鸞が申し上げる事どもも、また偽(いつわ)りである事もありますまい!ってか?貴様、手前(てめえ)の家が浄土真宗と知ってか!」
 「詮(せん)ずるところ愚身(ぐしん)の信心(しんじん)にをきては、かくのごとし!このうへは、念仏をとりて信じたてまつらんとも、またすてんとも、面々(めんめん)の御(おん)はからひなりと!云々……」
 「結局の処、愚かな此の身の信心では是の様になります!是の上(うえ)は、念仏を選んでお信じになられるのも、また捨てられるのも、皆様方のお計らい次第です!と云々……ってか?何だよ“と云々”って人と会話中に、“ツァラトゥストラはこう語った”みたいに一々テンプレで切り上げやがって!いや唯円(ゆいえん)の方が五、六世紀くらい先か……とにかく、『歎異抄(たんにしょう)』も『ツァラトゥストラ』も平成の内にもう読んだよ、其れで神も何も人間不信となって此の様だ!知恵を持ってしまったら、信心は手放さないといけない決まりなの?計らいで以(もっ)てして、神が人を信じられなくなるとでも云うの?神様ともあろうものが、人間ごときの道理で拗(す)ねちゃうの?令和の頭からずっと斯うだ畜生め、餓鬼め、地獄めが!!!」
 「……とても地獄は一定すみかぞかし!弥陀の本願まことにお

 新高の云う信仰の貯金は底を尽きた、まさか銀行貯金よりも早く。何時の間にやら神は、金と姿を眩(くら)ました。それから新高が話し掛けられる事もなくなった、いつかまた貯金の類いを始める迄は。ツァリンツァリン

二日目の午後

 三回目というのは本当の二回目でもあるんだ。二度ある事は三度あるをやるんだ。

 中肉中背の健康体で医師の所見無し。配偶者無し。生活は人並みだが、睡眠時間だけはかなり乱れている。小学生時分より読書を趣味とし、其れが今に繋がる夜更かしを不眠症にまで助長したのだと思われる。兄が二人いるので、三男という事になる。故に、何時も一回目と二回目を逃し続けた男である──新高昂(にいたか のぼる)、33歳。

 つまり、一回目というのは全てを貫く事だ。ならば、二回目というのは全ての裏を行く事だ。そして、三回目というのは全ての裏が表に成るという事だ。敢えての一回目を三回目にやるんだ。全て二回目の一回目だ──新高昂、33歳。

 「つまり、私は其の様に、愛されたかったのですね。三男なんですけど、初めての子供の様に、です。だから、長男とも次男とも違う、差別化ですよね。それが本当に、差別的になっちゃった(笑)、大体みなから避けられるんですよ。サクリファイス!生け贄と成った!そんな処でしょう!詳しくは、旧約聖書の“創世記”・第二十二章を参照されたし、です。何を隠そうこの“平成総体(へいせいそうたい)”という話は、私の七日間、たった一週間の出来事なんです。神の七日間、たった六回の眠りがもたらした天地創造なんです、つまり六界を経ての話であります。」

 三度目の正直をやるんだ。自己主張などするものか。異論反論するものか。エロとグロに次ぐ、この荒唐無稽がナンセンス──新高昂、33歳。

 プラス、マイナス、ゼロ、其の平成。更に其の、総体。しかし、ナンセンスに幾ら高尚なセンスを掛けた処で、ナンが難儀でナンセンス、x掛ける処の0は悉(ことごと)く無。此の平成。更に此の、総体。しかし、ナンセンスに幾ら高尚な、何のセンスを掛けた処で、うわあゝゝゝゝゝ

三日目の午前

 篠歩に感じた最大の違和、あれ一体何だったんだろう?篠歩(しのぶ)いうのは先日、別れたばかりの女だけど。最後の最後まで相容(あいい)れなかったあの感じ、今もよく分からない。

 例えば、私が通っていた(最低な思い出ばかりの)中学校の教室で、今の職場の上司が何故か、その彼がやった事もない数学の、難解な講義を私に向かって教えている、そんな夢を見た。何だ夢語りか、と辟易(へきえき)しないでおくれ。

 職場の上司には以前から言語化できない違和が、其の容姿や口調、凡(あら)ゆる言動の端々(はしばし)から感ぜられて、如何も苦手だったのだ。夢は記憶の各フォルダの鍵、引き出しの取っ手みたいなもので、私は其れを引きずり出してしまったという訳だ。要するに、職場の上司への違和が、いま解明されたらしい。

 中学の教室で・職場の上司が・数学を教える、こんなに最低が最高峰たるシチュエーションを用意してくれる夢、何時だって配慮も容赦もない夢。まず私の嫌いだった中学の先公の一人は、英語を教える浅黒い肥満体の眼鏡であったが、その話す時の声質、間の空け方、知識のひけらかし方等が、職場の上司(肥満体ではないが其れも浅黒い中年の眼鏡)と見紛う程だったのだ。何故に今迄、此の類似に気付かなかったのだろう。其れは両者が遠く隔てられた処で、頻繁にシンクロこそするものの、決して似ているとは言い難かったからであろう。私が最も嫌いだったのは件の英語の先公であったので、其れでは夢で職場の上司が教えていたのが何故に数学だったのかというと、此れは単に数学が一番の苦手科目だったからだ、全て引っ括めて嫌悪感の総合体を見せつけられたのだ。

 篠歩に対する違和の全ては、此れだろう。そして自らだけでなし、篠歩の方が抱いていた私への違和まで、同時に分かってしまった様である。そういえば、私の描く歪んだ丸い文字と、篠歩の書く“でん”と屹立(きつりつ)するよな角ばった文字の、そのフォントはかなり違っていたのだ、PCのワードにプリセットされている処の、平成明朝体に違いなかったのだ。

三日目の午後

 篠歩にとって恋愛など、流れ作業に違いなかった。カルマでなしノルマ。ただ新高は其れが解せないので、彼女だけが何時だって苦労した。幾らか自分自身の経験値になれば良かった、しかし気持ち悪くて思い出したくもない想い出ばかり。経験した事にしたくもない。

 馬鹿の一つ覚えに舌を入れてくる。前戯で延々と吸い付いてくる。しつこくて陰湿で痛い。性器をゆっくり入れて来るのが気色悪い。吐き気がする。どいつもこいつも痛い。痛い痛い痛い。

 適当に忘れられて、適度に覚えられている。そんな良い男は、一人と居やしない。一切を忘れようとしないで、合切が変な事ばかり覚えている。性別は全く、意識まで乖離(かいり)させる。異性は殆ど、非常識に近い。事後のあの、だらしない顔。また性懲りもなく盛る顔、どうにかならない?

 まだ私が男だったら良かった。へなへなした奴ばかり。あんな半端な蚯蚓(みみず)文字を書く奴より、私が男に生まれるべきだった。

 何だか此の男と同じ平成元年生まれというのが、急に気持ち悪くなってきた、おえ。どちらかが昭和か、いっそのこと令和生まれで、恋愛対象にすら成らないで欲しかった。性的対象に、人間的対象にしないで!!

 むかついて睨(にら)み付ける。“可愛い”とか抜かす。気持ち悪い。“怒らないで”とか抜かす。鬱陶(うっとう)しい。私だったらもっとマシな事を云う。何時も先にすっきりしやがって。私だったらもっとマシなタイミングで出す。何時も先に寝やがって。

 以上の訴え虚(むな)しく、新高は翌日の昼まで目を覚ます事がなかった。篠歩は無言で彼の部屋を去った、今度ばかりは二度と帰らないと決めて。事実、二人が逢うことはもう二度となかった。

 “絶対にそうだと分かって居ても、分かって貰うには絶対なんてものが無いから困るの。絶対以外を全てやってやらないと、一部を残して全部やるのよ!それできっと絶対という事が分かるでしょ、神様は素晴らしいんでしょ?其れより素晴らしいものがあっては困るの、貴方より良い人が居ては。私を良い人にされても、困るのよ。”

四日目の午前

 篠歩はどこ行ったのか、このまま二度と逢えない事はないにしても。にしても後何回、こんな事できるだろう。死ぬ迄に後何回、女とやれるだろう。昨日は良かった、燃えた、今朝だって、燃える、ゴミの日か。生きている内、後何回、ゴミ出しせねばならぬか。後何回、洗濯せねばならぬか。後何回、家賃払わねばならぬか。アパートの馬鹿野郎、マンションの馬鹿野郎。

 ここ十年以上住んでいるアパートの隣に、大きな駐車場付きのマンションが出来た。部屋の窓の真ん前に聳(そび)え立つ其れは、此のアパートの2.5倍程の高さがあって、恐らく7階位あるのではないか、周囲の景観からは明らかに浮いている。高円寺という土地に、高層階は似合わない。思えば建設中から嫌な予感がしていた、巨大で目障り、がんがん打ち付ける音の耳障り、一年近く続いた心障り、大家は何も知らなかったのか?であるから管理会社は、一刻も早く此処の家賃を下げて欲しい。

 はす向かいの家も大変だ、例のマンションのせいで私と同じ目に遭っているに違いない。いや、それ以上だろう。其処は築三十年程の一軒家で、父、娘二人、息子と住んでいる様だったが、母親らしき人は一度も見た事がない。お父さんと小学校中学年位の息子は毎週末、家の前の路地でキャッチボールをしている。二人は仲が良い様で、私は彼等の喧騒(けんそう)を気にも留めない。目障りでも耳障りでも心障りでもない。もっと派手に遊んでくれたら良い、とさえ思う。それから二人いる娘の上の方が、かなりグレているみたい。高校生くらいの娘だろうか、家の扉を壊さんばかりの勢いで開閉し、鬼の形相で駆けてゆくのを何度か見掛けた事がある。家の中だけでなし、家の玄関の前でも、淡々とした口調で話す父親に対して、近所に響き渡る程の大声で激昂しているのを幾度となく目や耳にした。もっと穏やかに話してくれたら良いのに。配偶者を持たない男やもめの私が、よその家族の事を此処まで知ってしまった。そない知らせてくれるな、そない知りたくなかった。であるから区自治体は、一刻も早く此処の家賃を下げて欲しい。

 処で今年の二月に始まったロシアによるウクライナ侵攻を理由に、原油価格が高騰していると言われて久しいが、この原油高騰というやつが、凡ゆる物価高の原因とされている。円安等の影響もあるので、正確には物価高の言い訳にされている。大手食品メーカーは主力商品を値上げするか量を減らすかして、地域のスーパーや飲食店も同様の動きを見せて対応している。食べ物だけでなし着る物にしてもそうだ、きっと着る物だけでなし住まいもそうであるはずだ。であるから国は、一刻も早く此処の家賃を下げて欲しい。

 或いはみんな金持ちになってしまえ、大それた苦悩の大半は消失するんぢゃないか、と貧乏人は考える。処がどっこい金持ちは金持ち以外に成らないで、貧乏には成れないで、苦難は続く。何十億の幸せと仕合わせ、何十億もの人と金、貧乏人よりケチケチ大事そうに手離さないから金持ちは誰より金持ちだ。であるから地球は、一刻も早く此処の家賃を下げて欲しい。

 家賃を受け取っているのは一体誰なんだ?目に見えない何者か?最終的に誰の手元に集まるんだ?カルト教団の教祖の懐か?それとも金銭みんな通り過ぎてゆくだけか?だから銀行貯金か?貯まっていたのは堪(たま)らない気持ちだけか?だから信仰の貯金か?であるから神様は、一刻も早く此処の家賃を下げて欲しい。

 私の家賃を下げて欲しい。命の家賃を下げて欲しい。人間の家賃を下げて欲しい。ツァリンツァリン